2024/05/24(金)23:57
週刊 読書案内 ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(新潮社
ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(新潮社) 「ハヤリ本」は読まない主義なのですが、ブレイディ・みかこさんの「そろそろ左派は経済を語ろう」を読んで、この本を図書館で予約しました。予約した時に待機の順番が100番を越えていました。昨年2019年の秋のことだったのですが、順番が回って来たのは2020年の3月の中旬でした。読み始めたら、すぐに読めました。読み終えた時刻は午前三時過ぎでした。なるほど、流行るわけだと、納得しました。
試しに「ブクログ」という読書サイトを覗いてみて驚きました。なんと、登録している人が4000人を超えていて、500人近い人がレビューを書いているのです。
何がそんなに評判なのだろうと、レビューを読みました。まじめに書かれたレビューがたくさんありました。ぼくがここで書き足さなければならないことはもう無いようです。どうぞ、そちらをお読みください。(「ブレディみかこ」をクリックしていただけば読めます。ついでですが、ぼくの書棚は「simakumakunの本棚」をクリックしていただければいいかと。)
とはいいながら、一つ書き加えたいことがあります。このエッセイの中で、著者は息子の学校の、多分、英語で書けば「teacher」のことを「教員」と書いていて、「husband」のことを「配偶者」と書いています。たったそれだけのことなのですが、そこにこの著者の見識が光っていると思いました。
女性の配偶者のことを「嫁」と呼んではばからないタレントがテレビ画面で「フェミニスト」ぶったり、自ら「教師」と名乗る教員が、教室で「平等」を口にするというのが、この国の現実なのですが、誰も疑いません。むしろ、世間の風潮として、そういう言葉遣いが若い人たちの間にも広がっています。
「日本語」が通じない国で暮らす著者が、日本の出版社である新潮社のPR雑誌「波」に書いた、おそらく「日本語」の原稿に、「配偶者」・「教員」と書くには、やはり勇気がいったと思います。その勇気が彼女のイギリスの暮らしを支え、「配偶者」や「息子」からの信頼を勝ち得ているように感じました。
本当は、もう一つ書きたいことがあります。というのは、このエッセイを読む一週間ほど前に「レ・ミゼラブル」というフランス映画を見たのですが、感想がうまく書けなくて困っていました。ところがこの本を読んでいて、ヨーロッパの先進国の「貧困」について教えられ、著者が鋭く指摘する「共感・シンパシー」と「理解・エンパシー」の違いの大切さについて気付かされて、自分が感じていたことがわかった気がしたのですが、それは「レ・ミゼラブル」の感想で書こうと思います。できれば、また、そちらをお読みいただければと思います。(題名をクリックしてみてください) 最後にもう一言付け加えれば、根性のまっすぐしている人の文章は「さわやか」だということでした。久しぶりに爽快な読書体験を味わえる読書でした。
是非お読みください。納得がいく本だと思いますよ。
追記2020・09・29
いつの間にか我が家の本棚に並んでいる本になりました。チッチキ夫人が買い込んできたようです。すると、思いがけない展開が始まりました。活字の本なんて、あまり手にしそうもないゆかいな仲間の一人が持って帰ってしまったのです。
何はともあれ、読む人が増えるのがうれしい本ですから、久しぶりに、なんだか痛快な気分になりました。
追記2021・07・22
久しぶりに行った新刊書店の平台に文庫化されたこの本が並んでいました。読み方は色々ですが、ブレイディ・みかこさんの考え方が、この国にも広がることを祈るような気持ちになりました。
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