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吉本隆明「佃渡しで」(「吉本隆明代表詩選」(思潮社)」
「佃大橋から勝鬨橋を臨む」 「佃大橋」 東京の月島に住む友人が歩いて「佃大橋」を渡っています。ぼくには「佃大橋」とか「月島」とかの地理がよくわかっているわけではありません。フェイスブックに投稿された、晩春の隅田川の風景や、人も車もほとんどいない大橋の写真を見ていると東京で暮らす知人たちのことが思い浮かんできます。みんな、無事で元気にしているのでしょうか。 今日は2020年4月26日です。こんな感慨を持つ日がやってくることは、さすがに、予想できませんでした。 「佃大橋」という地名を見て、詩人の吉本隆明の死と彼が1960年代に書いた詩を思い出しました。 友人が渡っている佃大橋が竣工したのが1964年8月だったそうです。「東京オリンピック」の年の夏ですね。 詩の題名になっている「佃の渡し」は佃大橋の竣工とともに廃止されたそうです。詩のなかに「河蒸気」の姿が描かれているところ見れば、渡し船がまだ運行していた世界が描写されているようですが、詩人の目の前には1961年に着工され、工事中の大きな橋が見えているようです。 一人の少年の思い出の世界は、今、大きく変貌しようとしているようです。この詩において、それは、「すべての距離がちいさく見え」始めた詩人自身の変貌であり、少年たちが「悲しみ」を流すためにあった「橋」の働きが失われていく社会の変化でもあったのではないでしょうか。 そこから60年の歳月がたち、詩人がなくなっ2012年からでも、10年近くの時が流れました。 身を乗り出して「永代橋」の写真を撮って送ってくれている友人は、橋のたもとに、今でも60年前の「佃の渡し」の痕跡を見つけることができるのでしょうか。 追記2020・04・27 ボタン押してね! ボタン押してね! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.07.25 08:20:38
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