2023/12/06(水)21:16
アニエス・バルダ「5時から7時までのクレオ」元町映画館no54
アニエス・バルダ「5時から7時までのクレオ」元町映画館
60年前、フランスのヌーベルバーグの先頭に立っていた一人アニエス・バルダの「5時から7時までのクレオ」を見ました。映画音楽では忘れることのできない「ミシェル・ルグラン特集」で取り上げられた一作です。
カード占いのシーンから始まります。全編でこのシーンだけがカラーで、あとは白黒ですが、その組み合わせが印象的でした。
コリンヌ・マルシャンという女優さんが演じるシャンソン歌手のクレオのある日の午後が、時刻のクレジットをスクリーンに刻みながら入れながら進んでいきます。
この方が「死」の妄想に憑りつかれた女性ですが、彼女の、今日の、今この時が映像になって進行します。出来事に妙な空白感があるのは、かえってリアルですが、どこかで、見ている観客をからかっているような、ちぐはぐとした滑稽感も漂っています。
たぶん「死」をめぐる無意識が、意図的に映像化されているのだろうと思いますが、そこに漂うちぐはぐ感が面白さだと思いました。
この文章の書き出しで、アニエス・バルダの映画であることを書きましたが、実は、彼女の映画だと気づいたのはそのあたりのムードでした。
占い師の手、顔、秘書だかマネージャーだかの顔、もちろん、クレオの手と顔もですが、写真のようなアップの繰り返しです。アップされた、手つきとか、顏つきが突如迫ってきて、声には出しませんが、笑えるのです。そして鏡。何故、妙におかしいのか、この60年前のフランス映画が何を写しだそうとしていたのか、奇妙な不思議さは印象に残りました。
いろいろな批評がある映画なのだろうと思いましたが、例えば、映像の中の「街並み」や「ジュークボックス」が古いのではなくて、ここで映し出されている人間の有様が古いと感じたのはなぜなのか、とても気がかりな「問い」を残した映画でした。
監督 アニエス・バルダ
製作 ジョルジュ・ド・ボールガール カルロ・ポンティ
脚本 アニエス・バルダ
撮影 ジャン・ラビエ ポール・ボニ アラン・ルバン
美術 ベルナール・エバン
音楽 ミシェル・ルグラン
キャスト
コリンヌ・マルシャン
アントワーヌ・ブルセイユ
アンナ・カリーナ
ジャン=クロード・ブリアリ
エディ・コンスタンティーヌ
サミー・フレイ
ミシェル・ルグラン
ダニエル・ドロルム
セルジュ・コルベール
1961年・90分・フランス・イタリア合作 原題「Cleo de 5 a 7」
日本初公開:1963年5月24日
2020・09・28・元町映画館no54
追記2022・12・16
アニエス・バルダの「冬の旅」という作品を見てきました。「どうして、この少女はこんなにも切なく描かれなければならないのだろう!」そんな気持ちで見終えましたが、家に帰ってきて、ようやく、アニエス・バルダの作品だったことに思い当たり、3年前のこの映画のことを思い出して、読み直しながら、まあ、何が言いたいのかわからないことはともかく、彼女の描く若い女性は明るい未来とは縁遠いことに納得しました。
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