朝倉裕子「詩を書く理由」(編集工房ノア)
大人になっても
大人になっても
しゃがみ込んで
こどものように
泣きたいときがある
母になっても
電車に乗って隣町あたりへ行き
捨てられた犬になって
歩いていたいときがある
風のない夜の雪のように
静かに降り積もるものが
眠りによって繋がれた日常の上に
重ねた年月の上に
心の底に握った小さな固いこぶしの上に
ある
冬至の頃
真横に伸びるひかりが
家を貫く時間がある
冬の中心に向かうなかで
与えられた驚き
黙しがちな朝の支度の最中
胸のあたり
黄金色の扉がひらく
久しぶりにチッチキ夫人と映画を見て、元町から神戸駅に向かって歩きながら古本屋に立ち寄りました。偶然、手に取った1冊の詩集のページを繰りながら、詩人の名前に心当たりを感じて買ってきました。朝倉裕子さんの「詩を書く理由」(編集工房ノア)という詩集です。
詩人は、夕食を調え、月を見上げ、路上のネコとの出会いや、隣家の白い木蓮の花の思い出を詩のことばに託しています。
家族が寝静まった真夜中の台所のテーブルに広げられた1冊のノートがあり、ジッと俯いてすわっている女性が思い浮かんでくる詩集でした。
彼女はこの台所で子供を育て、父や母を送り、マイタケのてんぷらで銀婚式を祝う夫と暮らしているようです。
「風のない夜の雪のように」降り積もり続ける時間、黄金の光が差し込んで来る冬の朝の喜び、ひっそりと、日々の暮らしが書き留められた詩が、他人ごとではなく、胸を打ちました。
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Re:週刊 読書案内 朝倉裕子「詩を書く理由」(編集工房ノア)(11/13)
|
ハム吉 さん |
シマクマさん
お言葉ありがとうございました。
励みにさせて頂きます。
(2020.11.23 00:27:56)
Re[1]:週刊 読書案内 朝倉裕子「詩を書く理由」(編集工房ノア)(11/13)
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シマクマ君 さん |
ハム吉さんへ
コメントありがとうございます。
日々、降り積もってくるものに、抗いたかった、若き日の暮らしを思い出しながら、仕事をやめても、同じように降り積もるものに、抗いきれない今日この頃です。
元町の古本屋さんで偶然手にしました。ひょっとしたら、知っている人じゃないかと思い購入しました。
(2020.11.23 09:41:00)
Re[2]:週刊 読書案内 朝倉裕子「詩を書く理由」(編集工房ノア)(11/13)
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ハム吉 さん |
シマクマさんへ
ご購入頂いて本当に恐縮しましたが、嬉しく感想を読ませて頂きました。
読書会には参加できていませんが、街中での徘徊でお見かけしましたら、お声をかけさせて頂きたく思います。どうぞよろしくお願いします。
(2020.11.23 12:35:30)