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カテゴリ:読書案内「社会・歴史・哲学・思想」
週刊 読書案内田中優子「江戸から見ると(2)」(青土社)
![]() 江戸文化の、若き研究者だった田中優子さんが「江戸の想像力」(筑摩書房・ちくま学芸文庫)を引っさげて、さっそうと登場したことを、1980年代の半ばだったと思いますが、つい昨日のことのように覚えています。そういえば、昨今ハヤリの、江戸の画家曽我蕭白もこの本で知ったのでした。 ほぼ、同性代の研究者であり、ぼく自身の学生時代の関心が江戸思想史だったということもあって、「江戸の音」(河出文庫)、「近世アジア漂流」(朝日文庫)と立てつづけに発表される著作に現れた関心の幅と厚みに圧倒されながらも、今でいう、フォロワーとして「カムイ伝講義」(ちくま文庫)まで読み継いでいましたが、何となくというか、自分自身の江戸に対する関心の薄れの結果でしょうか、ここ10年、その仕事に興味を失っていました。 そんな、田中優子さんですが、先日、図書館の新刊の棚で見つけたのが「江戸から見ると2」でした。 著者の来歴を見ると、いつの間にか法政大学の総長とかで、 「おやおや、これは、これは。」 と、いったん棚に戻しかけたのですが、内容が、新聞の連載コラムということで、 「いったいどんなことをどんなふうに語るようになっているのだろう。」 と、その場でパラパラページをくると、一つ一つの文章が短くて、日々の某所での読書にピッタリだと思い直して借り出しました。 読み始めてみると、上でも書きましたが、毎日新聞に連載されている時事コラムでした。話題は「沖縄」、「石牟礼道子」、「韓国、中国との外交」、「大学生の就職」、「中村哲」、「セクシャルハラスメント」、「老人介護」と多岐にわたりますが、論旨の根幹にある思想のゆらがなさ、思考の対象に対する関心の深さと広さ、何よりも口調のよさに一気読みでした。 論旨や思考については、まあ、今や専門家の親玉なので当然ですが、歯に衣着せぬ「啖呵」まがいの気っ風のよい口調は、この人ならではではないでしょうか。 最近、こういう「正論」をはっきり口にするコラムには、なかなか出会えないのではないでしょうか。こんなふうに言っても、よく分からないですね。 一つ例を引用します。昨年の秋評判になった「主戦場」という映画について「論争型編集で見えたもの」と題して語っている文章です。 「論争型編集で見えたもの」いかがでしょうか、まあ、考え方にはいろいろあるでしょうが、ぼくは「背筋が寒くなった」と言い切っているのを読んで、胸がスッとしました。田中優子健在ですね。 今も、このコラムが新聞紙上で続いているのかどうか知りませんが、最近のコロナ対策の迷走ぶりや、学術会議への弾圧事件に、どんなことをおっしゃっているのか、興味津々ですが、そういえば、トップに立った、元苦学生(?)の政治家についての話題も、この本に所収されている2019年の段階で、すでに、バッサリだったような気もします。一度に二つ、三つ読んで、ちょっと気が晴れる読書に最適でした。 ![]() ボタン押してね! ボタン押してね! ![]() ![]()
最終更新日
2020.12.08 13:12:09
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