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2021.01.21
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100days100bookcovers no43  (43日目)
 ​千野栄一『ビールと古本のプラハ』(白水Uブックス)​


 前回YAMAMOTOさんの選ばれた1冊は『下町酒場巡り』でした。目次を見ていたら、東京下町の味のある居酒屋が多数紹介されています。そのなかには行ったことのあるお店も一軒。そうなると全部行ってみたくなるのですが、こういう本は、写真を見たり、文章を読んだり、ときどき本を開いて、その街に行った気分になるだけでも楽しいものです。行けないところへ旅ができる、というのも、私にとっては読書の楽しみのひとつです。
 さて、次はどうしようかな、お酒のことが書いてあって、東京からは離れたい、できれば日本からも、ということで思いついたのがこの本です。
​『ビールと古本のプラハ』千野栄一(白水ブックス)​
​​ 聞き慣れない名前のこの著者は、さまざまな大学でチェコ語を主としたスラブ語を研究し、教えた人です。平たく言えば、大学の先生です。
 私の手元にはもう一冊、ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』(集英社文庫)の翻訳者として、千野栄一の本がありました。買ったときにはそのことを知らず、『ビールと古本のプラハ』に書かれていて初めて気づいたのですが。​​

 1989年にベルリンの壁が崩れたあと、1990年に東欧を旅行して以来、主にハンガリーとチェコに対する興味が細く長く続いているのですが、この本はその興味の一端として買った本でした。むずかしい政治の本などはなかなか読み続けられないのですが、人々の生活の方面から国を紹介する本なら楽しく読めるのです。
 とはいえ、ただのプラハの街案内ではありません。ばらばらに書かれたエッセイを集めた一冊ですが、そのほとんどは1990年から1997年頃に書かれていて、それはつまり、共産党政権が倒れてチェコが民主化された1989年の革命、「ビロード革命」の直後に当たっています。
 民主化によって街が激変してゆくようすが、異邦人である著者の目を通して、まさに体感として描かれているのです。1958年にプラハに留学し、以後何度もチェコを訪れている著者だから、激変への驚きや感慨がリアルなのでしょう。

​ 「激動プラハの出版事情を見る」の一章は、革命から2ヶ月後のプラハのようすがよく分かります。長い行列を「何だろう」と見に行ってみると、『ビロード革命の記録』というパンフレットを求める人の行列だった、というエピソードなどは、プラハ市民がこの事態にどれだけ絶大な関心を持って暮らしていたかがよく分かります。​
​​「かつて官製の新聞には見向きもしなかった人たちが、一斉に新聞を読み始めていた。行列といえば肉という時代もあったのに」​​
​ と添えられた一文も、街の空気をよく伝えています。​
 そして、民主化と同時に、革命前にあった老舗のカフェが次々と無くなり、古本の価格が高騰し、やがて、土地の値段と共に家賃も上がって古書店自体が閉店したり、移転したりしてプラハの中心から消えてゆきます。なんとか残れたとしても、版画や写真や地図を扱う観光客相手の店に変貌してゆくのです。資本主義経済がやってきたからです。
​​ 共産党時代にチェコスロバキア国籍を剥奪され、フランスで市民権を得たミラン・クンデラを書いた「愁いに沈む人間クンデラ」も興味深い一章です。
 クンデラの著書はチェコで発禁になったのですが、自国で発禁にあった著書をチェコ語で出版する出版社がカナダにあり、クンデラはそこからチェコ語の書物を出版していたというのです。なんと、出版社自体がチェコからカナダへ亡命したのでした。千野が翻訳した『存在の耐えられない軽さ』の底本は、このカナダの出版社から出た本です。​​

 クンデラはまだ存命で、パリ在住のようですが、ビロード革命以後はその著書はチェコで出版されています。もちろんほかに何人もの作家の著書が解禁になりました。民主化にも光と影があり、これはその「光」の部分ですね。
 さて、ビールの話はどこへいったのか、ということになるのですが、この本の前半で、たっぷりとチェコビールが語られています。チェコはドイツと並んでビールの美味しい国です。チェコ語なので覚えられませんが、オススメの銘柄もたくさん出てきます。著者はどうやらかなりお酒を愛する人物だったらしく、ビアホールのエピソードも次から次へと出てくるのですが、カフェと違い、革命後の1990年代も存続しているのは、ビールをこよなく愛する市民の力でしょうか。ただ、20世紀末の情報ですので、今現在のプラハがどうなっているのかは、最新の観光案内でしか知ることはできないと思います。
 古書店巡りのエピソードも楽しいのですが、書いてゆくと長くなりそうですのでやめておきます。
​​​ 最後に、心に残ったこのエピソードをご紹介します。1996年の東京国際映画祭でグランプリを獲った『コーリャ 愛のプラハ』というチェコ映画があるのですが、その監督のヤン・スヴェラークに著者がインタビューしたとき、千野は逆にヤンからこう訊かれたそうです。​
​​「なんでチェコ語なんかやったんですか?なにか役に立ちましたか?」​​
 ​それに対して千野は、チェコ語が役に立った具体的な例を挙げて返答をしているのですが、「どうしてチェコ語を勉強したのか」という問いには答えていません。​​​
​​ ヤンは軽い気持ちで訊いたのでしょうし、だから千野も正面からは答えていないのでしょうが、これはたぶん、根源的すぎて答えるべき言葉がなかった、ということではないかという気がします。
 役に立てるためにするわけではない、「惹かれる」というのはそういうことではないかと思うのです。
 1932年生まれの千野がチェコ語を専攻しようと思うことは、日本ではとんでもなく「つぶしがきかない」ことだったでしょう。もしかしたら今でもそうかもしれません。でも人は「その道」を選ぶことがあるのです。​​

 などと書いているうちに思いだしたことがあります。1990年に私がチェコを訪れたとき、観光案内をしてくれたのはプラハ・カレル大学の女子大生でした。彼女は日本の研究をしていて、留学経験もあり、流暢な日本語を操りました。どうしてチェコの学生が日本語を?と私もあのとき思ったのです。彼女に明確な理由があったかどうかはわかりませんが、彼女も「その道」を選び、爽やかに歩んでいました。
 こういう、その人の世間の主流からずいぶん遠いところに興味を持って生きている人を知ることが、私は大好物なのだと思います。
 ということで、KOBAYASIさん、次をよろしくお願い致します。(​2020・10・05・K.SODEOKA)

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最終更新日  2021.01.21 00:55:40
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