2024/10/14(月)21:19
カロリーヌ・リンク「ヒトラーに盗られたうさぎ」パルシネマno39
カロリーヌ・リンク「ヒトラーに盗られたうさぎ」パルシネマ 童話作家ジュディス・カーの体験記、幼い日の経験を描いた「伝記映画」でした。題名は「ヒトラーに盗られたウサギ」でした。監督はカロリーヌ・リンク、ドイツの女性です。
ヒトラーが政権を取った1933年、祖国ドイツから逃げ出さなければならなくなったユダヤ人の劇作家で、演劇評論家ケンパーという人の十歳の娘アンナの物語でした。
家政婦の女性ハインピーさんとアンナの会話、ケンパーの忠告を聞かず自国にとどまったユリウスおじさんの不幸、スイス、フランス、イギリスと逃亡生活、いや亡命生活というべきか?を続けるケンパー一家の暮らしぶりや、それぞれの土地で出会う様々な人間。それぞれの土地の風景や学校。ナチスによる迫害が深刻化していく社会と、その時代を生きる少女の成長。
ストーリーの運びは穏やかですが、たとえ10歳の少女であろうと、人間が歴史的な「存在」であることを誠実に描いた作品だと思いました。
自宅に残してきた「ぬいぐるみのウサギ」が、幼いアンナに取って帰りたい場所の象徴ですが、2019年に95歳で亡くなったジュディス・カーが、お孫さんたちに残した最後の作品「ウサギとぼくのこまった毎日」(徳間書店)という童話の主人公もウサギだったことを思い出して、戦後もイギリスで暮らしたらしいジュディス・カーが、時間を超えて、本当に帰っていきたかった「世界」のことを考えました。
出てくる子供たちが、アンナとマックスの兄妹だけでなく、溌溂としていて楽しい映画でした。拍手!
監督 カロリーヌ・リンク
製作 ヨヘン・ラウベ ファビアン・マウバッフ
原作 ジュディス・カー
脚本 カロリーヌ・リンク アナ・ブリュッゲマン
撮影 ベラ・ハルベン
編集 パトリシア・ロメル
音楽 フォルカー・ベルテルマン
キャスト
リーバ・クリマロフスキ(アンナ・ケンパー)
オリバー・マスッチ(アルトゥア・ケンパー:父)
カーラ・ジュリ(ドロテア・ケンパー:母)
マリヌス・ホーマン(マックス・ケンパー:兄)
ウルスラ・ベルナー(ハインピー:家政婦)
ユストゥス・フォン・ドーナニー(ユリウスおじさん)
2019年・119分・G・ドイツ
原題「Als Hitler das rosa Kaninchen stahl」
2021・06・01‐no50パルシネマno39