2023/08/11(金)22:24
オレシア・モルグレッツ=イサイェンコ「キャロル・オブ・ザ・ベル」シネ・リーブル神戸no202
オレシア・モルグレッツ=イサイェンコ「キャロル・オブ・ザ・ベル」 ウクライナ生まれのオレシア・モルグレッツ=イサイェンコという監督の「キャロル・オブ・ザ・ベル」という作品を見ました。
1939年1月、当時、ポーランド領内にあったスタニスワヴフという町が舞台でした。ユダヤ人の一家が大家さんであるアパートに、ウクライナ人の音楽家一家とポーランド人の軍人の家族が引越ししてくるところから映画は始まりました。
ウクライナ人一家の娘で、歌の好きな少女が、ことあるごとに歌うのがウクライナの民謡「シェドリック」=「キャロル・オブ・ザ・ベル」で、それが映画の題名になっています。
三つの家族が暮らすスタニスワヴフという町は、当時はポーランド領ですが、現在ではスタニスワヴフイヴァーノ=フランキーウシクという、ウクライナ領の町です。
1920年代から2020年代までの約100年間、だいたい1世紀という時間の幅で考えてみると、間に、この町を現れた、よその国の軍隊は帝政ロシア軍、赤軍、ナチスドイツ軍、ソビエト軍。で、ソビエト崩壊があって、20世紀のロシア軍がすぐに思い浮かびますね。まったく素人の興味本位ですから、ポーランド、ウクライナの国境問題まではよくわかりませんが、あっちから、こっちから、ろくでもないことの繰り返しだったことは間違いありませんね。で、映画は1939年、その町に暮らしていた三つの家族の3人の少女の、1978年だったと思いますが、40年後の再会の物語でした。 赤軍によるポーランド人の迫害、ナチスによるユダヤ人の迫害、ソビエト軍によるドイツ人、ソビエト共産党の反共産主義者・ウクライナ民族主義者に対する迫害。構図としてすぐに思いうかぶ激動のなかを、「キャロル・オブ・ザ・ベル」をお守りのように歌う少女の半生が振り返えられる作品でした。 登場する子供たちのイノセンスなまっすぐさが胸を打ちました。作品は2021年、今回のロシアのウクライナ侵攻以前に制作されたもので、反ロシア的ナショナリズムのプロパガンダ映画というわけではありませんが、ウクライナという国家というか、民族というかに対する「愛」の表現が少々図式的なのが、ボクには残念でした。
監督 オレシア・モルグレッツ=イサイェンコ
脚本 クセニア・ザスタフスカ
撮影 エフゲニー・キレイ
美術 ブラドレン・オドゥデンコ
編集 ロマン・シンチュク
音楽 ホセイン・ミルザゴリ
キャスト
ヤナ・コロリョーバ(ソフィア・ミコライウナ)
アンドリー・モストレーンコ(ミハイロ・ミコライウナ)
ヨアンナ・オポズダ(ワンダ・カリノフスカ)
ミロスワフ・ハニシェフ(スキヴァツワフ・カリノフスカ)
ポリナ・グロモバ(ヤロスラワ・ミコライウナ)
フルィスティーナ・オレヒブナ・ウシーツカ(テレサ・カリノフスカ)
アラ・ビニェイエバ(ベルタ・ハーシュコウィッツ)
トマシュ・ソブチャク(イサク・ハーシュコウィッツ)
エウゲニア・ソロドブニク(ディナ・ハーシュコウィッツ)
2021年・122分・G・ウクライナ・ポーランド合作
原題「Carol of the Bells」
2023・07・21・no92・シネ・リーブル神戸no202