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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2024.09.13
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​​結城正美「文学は地球を想像する」(岩波新書)
​ 市民図書館の新刊の棚に「文学は地球を想像する」という表紙があって、副題に「エコクリティシズムへの挑戦」という言葉を見たときに、あなたならどう反応しますかね?
​​​新しいものにはついて行けない!
​ ボクの場合、まあ、ここのところ、その自覚と諦めで暮らしているわけですから、こんな題名は素通りが相場なのですが、手に取ってしまったんですよね。​
 で、これが、結構、どころか、チョー面白かったというわけです(笑)。
​ 著者英文学がご専門で、エコクリティシズムとやらに挑戦なさっている50代の女性研究者のようですが、「地球を想像」という大きな話はともかく、なにはともあれ
​​​エコクリティシズムってなに?​​​
​ なのですね。​​
 「エコクリティシズム(ecocriticism)」は、「エコロジカルな文学研究(ecological literary criticism)」の略で、「文学と物理的環境の関係についての研究」と定義される。漠然とした定義にみえるが、この間口の広さがエコクリティシズムの最大の特徴だ。​
 というのが、本書の冒頭での定義です。生真面目な方なのでしょうね。普通の「文学好き」の人は、ここでページを閉じそうです。​
​​ ハハハ、たとえば、間口云々以前に、​​
​​​物理的環境って何?​​​
​ なわけですが、まえがきにその説明は、まあ、あるような、ないような、ですが、たとえば、「自然環境」、「地球環境」、「生活環境」、という具合につかう、環境という言葉を総称しているようですが、​まえがき​の結論は、
​自然環境、都市環境、地球環境をめぐる文学的想像力を見ていくことにしよう。​
​ でしたが、まあ、ここから何をなさりたいのか、予想がつきませんね(笑)。​​
 で、第1章で話題にされている文学的想像力というのはソール・ベロー「森の生活」から始まって、シートン動物記です。「見ていく」ための視点として導入されるのがジョン・バージャーという美術史家(?)「進歩の文化」、「生存の文化」という概念です。
 第2章では灰谷健次郎「兎の眼」が出てきて、赤坂真理「空地論」(「愛と暴力の戦後とその後」(現代新書)の中のドラえもん論にあります。が参照されます。
 第3章では石牟礼道子「苦海浄土」、梨木香歩「雪と珊瑚」。なんか、この取り合わせが、ちょっとぶっ飛んでるんですが、読むと納得ですね。
​​ 第4章アレクシエーヴィッチ「チェルノブイリの祈り」小林エリカ「マダム・キュリーと朝食を」カズオ・イシグロ「クララと太陽」と来て、続けて、多和田葉子からリチャード・パワーズへと、めくるめく展開でたたみかけていきますが、読み終えて納得しました。最近では、とんとお目にかからない、正真正銘の「文芸評論」、あるいは「文芸批評」そのものなのでした。​​
​ ただ、ボクのような古い世代には「エコクリティシズム」というのが、まな板なのか、包丁なのか、はたまた皿に盛られた料理の種類なのかにまず戸惑いますね。で、とりあえずまな板の上で捌かれる作品の切り口、だから
​​​読解の過程​​​
​ が、ボクなんかの普段の読み方とは違うわけで、そこでも、やはり戸惑いながらなのですが、​​
「そうか、そういう読み方で見えてくるものがあるか!?」
「そう読めば、そう見えてくるのか?」
​ まあ、そういう感想ですね。​
 チョット、自分に照らしていえば、50年近く文学好きとやらで暮らしてきて、まあ、目の前の対象に
​​​「こんなもんだろう。」​​
​ と硬直し切った判断を下す「視点・視覚」というのは、自分自身の「まな板」「包丁」を対象化することが難しいのですね。どうしても、懐手をして、聞いた風な感想をいうということの繰り返しになってしまっています。
​​​​​ 映画を見ても、音楽を聴いても、まあ、似たようなことが起こります。新しい作品に出逢っているはずなのに自前の古い包丁で捌いてしまう。包丁やまな板の扱い方というのは、ボクに限らず、それぞれの人の経験の結果ですから、更新することが難しいことはわかっています。しかし、新しい包丁やまな板の使い方で、同じ作品の切り口が変わって、味が変わってくることを、ちょっと気づき始めることは、やはり刺激的でした。
 とりあえず、まあ、やたら長いですが、目次を貼っておきます。ボク自身には、小林エリカという作家の発見が事件でした。
 まあ、いずれ案内できればと考えていますが、もう少し咀嚼の時間が必要なようですね。​​​​​
まえがき
  想像力の危機は環境の危機
  物語の力
  本書の構成
序章 エコクリティシズムの波動
  環境危機と文学研究
  エコクリティシズム宣言
  「環境批評」や「文学と環境」という別称
  実態と言説のあいだ
1章 近代化、わきたつ野性――綴り直される感覚
 1 ネイチャーライティングと散歩者の夢想――ヘンリー・D・ソロー『森の生活』
  自然を知るということ
  私という社会
  歩くという実践哲学
  野性を映す過剰の文学
  野性にこそ世界は保たれる
  ネイチャーライティングとは
 2 山の身になって考える――アルド・レオポルド『野生のうたが聞こえる』
  科学と美の融合
  美が心の目をひらく
  自然保護から土地倫理へ
  凶暴な緑色の炎
  〈生存の文化〉と〈進歩の文化〉
2章 森を出て環境を知る――〈自然らしさ〉という神話
 1 自然は逃避先なのか――生の網の目、搾取の網
  自然志向に関する誤謬
  環境正義エコクリティシズム
  ポストコロニアル的転回
  アフリカの国立公園が意味するもの
  アメリカの国立公園が意味するもの
 2 都市のなかの自然――『兎の眼』と『オレンジ回帰線』
  ハエと少年
  きれいは汚い、汚いはきれい
  空き地と基地
  北回帰線が動くとき
  境界をかき回す
  ホームとしてのフリーウェイ
  危惧される〈経験の絶滅〉
  技術圏の自然
3章 危機が叫ばれる時代に――つくられた共生、生きられた共生
 1 「自然との調和」を再考する
  「自然との調和 」はエコロジカルなのか
  生物多様性国家戦略にみる〈共生〉のレトリック
  プラスチック・ワードのなめらかさ
  連なるいのち、あるいは、生きものを殺して食べる罪の自覚
 2 切れないいのち――石牟礼道子『苦海浄土』
  「水俣病わかめといえど春の味覚 」の過剰さ
  海とともにある人
  ビオスに還元されないいのち
  絡まりあいの多声性
  水俣という場所、マルチスピーシーズの里山・里海
 3 暮らしのなかの脱成長――梨木香歩『雪と珊瑚と』
  真似したくなる節度ある豊かさ
  経済成長社会に幻視される別の道
  「チーム ・自分」の共同体
  手から生まれる快楽と連帯
4章 人新世を考えるために――〈人間以上〉を描く作家たち
 1 核の時代の祈り――スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチと小林エリカ
  メタ言語としての科学技術
  放射能発見からたかだか一二〇年
  廃棄と封じ込めの思考
  誰にとっても未知の場所
  見えない光への感応
  官能の境界侵犯性
 2 人工親友がいる日常――カズオ・イシグロ『クララとお日さま』
  画面の向こうには何があるのか
  AIの記憶にみる他=多のふるまい
  機械から仲間へ
  技術圏のトリックスター
  ロボットに人間らしさが感じられるとき
 3 惑星規模の思考へ――多和田葉子とリチャード・パワーズ
  人間による、人知を超えた、ありふれた危機
  地球に同調する子どもたち
  まるい地球の曲線に沿って考える
  いつまでも地球のお客さん気分でいちゃいけない
  活動的な静寂、あるいは人間の擬樹化
  技術圏で森の身になって考える
終章
  想像力の再調整
  危機とともに生きるために
あとがき
 引用参照文献




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 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)​​​​
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最終更新日  2024.09.23 00:13:56
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