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カテゴリ:映画「ちょっと遠くの映画館」でお昼寝
マーク・フォースター「ホワイトバード はじまりのワンダー」キノシネマ神戸国際 「ワンダー 君は太陽」という映画の後日編というお話なのだそうですが、肝心の「ワンダー君は太陽」を見ていないのですから、さて、どうなることやらという気分で見ました。
納得でしたね。 画家であるサラばーちゃんがいじめが理由で退学になった、多分、高校生くらいのジュリアンくんの家にパリからやってきて、なんだかはっきりしない孫の様子を見て、若かりし日の体験を語るという設定のお話でした。 何といっても、 オバーちゃんのサラさんが語り始める、その最初のことば で鷲摑みでした。 「ジュリアン、あなたは、自分から転校したんじゃなくて、あなたがいじめをやったことが理由で退学になったんでしょ。」語っているサラばーちゃんを演じているのは、御年79歳のヘレン・ミレンでした。 「えっ?エリザベス女王ちゃうの、この人?」 まあ、そういうおバカなことを考えならでしたが、サラばーちゃんが語る、80年前の彼女自身の体験に見入りました。 彼女が語ったのは、フランスに進駐したナチスドイツによるユダ人狩りの嵐の中で、サラ・ブラムというユダヤ人の少女が、もう一人のジュリアンとその家族に匿われ生き延びるのですが、彼女を命がけで助けたジュリアン少年は障碍者である彼を差別する同級生の密告と小児麻痺で歩行が困難だったことをナチスの軍人に見とがめられた結果、連行され殺されてしまうという、サラばーちゃん自身が体験した悲劇のお話です。 得心したのは、まず、隠れ家の納屋の中という、実にサスペンスフルな状況の中での少年と少女の恋シーンのすばらしさでした。閉じこめられた空間の中で想像力の無限の可能性を表現しようとする映像の美しんのなんのってという気分です。 もう一つは、オバーちゃんが、あの時、ジュリアンに教えられて、彼女の80年間の生涯を支えてきた 人間万歳!という合言葉を、自分がいじめをしたことに戸惑っている孫のジュリアンに伝える姿でした。おばーちゃんの決して押し付けではない 「自分のこころに光をともして人と出会う」 ことが人生を支えるという語りかけには胸打たれました。 あのね、人間万歳とか、こうして日本語で書いてみるとなんかリアリティがないんですよね。でもね、たとえば、いじめっ子が、開きなおるんじゃなくて、いじめてたことをみとめるところから自分をもう一度肯定するというのは、実は大変だと思うんです。でね、人間って自分を肯定することなしには、やっぱり生きていくのが大変だと思うんです。 映画は、今、ダメな自分に出会っているジュリアンだけじゃなくて、不自由な脚をからかわれ、クラスでは「蟹」と呼ばれていて、で、子どもだったオバーちゃんもそう呼んでいた、あの時のジュリアンや、呼んでいた少女のサラちゃんがどうやって、それもナチスのユダ人狩りの最中に、「人間万歳」にたどりついたのか、チャンと描いていて、納得がいくんです。もう、ハラハラ、ドキドキなのですけどね。 おバーちゃんのヘレン・ミレン、あの時のサラとジュリアン、そして、新しく生き始めた今のジュリアンに拍手!でした。 監督 マーク・フォースター 原作 R・J・パラシオ 脚本 マーク・ボンバック 撮影 マティアス・クーニクスビーザー 美術 ジェニファー・ウィリアムズ 衣装 ジェニー・ビーバン 編集 マット・チェシー 音楽 トーマス・ニューマン キャスト アリエラ・グレイザー(サラ・ブラム:少女) ヘレン・ミレン(サラ:現在) オーランド・シュワート(ジュリアン・“トゥルトー”・ボーミエ) ジリアン・アンダーソン(ヴィヴィアン・ボーミエ:ジュリアンの母) ジョー・ストーン=フューイングス(ジャン=ポール・ボーミエ:ジュリアンの父) ブライス・ガイザー(ジュリアン・アルバンス:祖母サラの話を聴く少年) ジェム・マシューズ(ヴィンセント:同級生) イーシャイ・ゴーラン(マックス・ブラム:サラの父) オリビア・ロス(ローズ・ブラム:サラの母) 2024年・121分・G・アメリカ 英題「White Bird」 2024・12・07・no159・キノシネマ神戸国際no19
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最終更新日
2025.01.19 10:31:14
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