ミン・ファンギ「オン・ザ・ロード 不屈の男、金大中」元町映画館 金大中という名前を初めて知ったのは1973年、京都で浪人していた19歳の年でした。テレビも新聞もない、もちろんネットもスマホもない下宿生でしたが、隣国の大統領候補である政治家が東京のホテルで拉致され、行く方不明になるというスキャンダラスな事件に興奮したことを覚えています。
彼は、その後、命からがらの人生を85歳まで生きて2009年に亡くったと思いますが、今年が生誕100年で、この映画が作られたようです。
映画はミン・ファンギ監督の「オン・ザ・ロード 不屈の男、金大中」でした。
KCIA、戒厳令、軍事独裁、韓国現代史に関心を持つと浮かんでくるのは、まあ、そういうろくでもない言葉ばかりです。李承晩、朴正煕、全斗煥、盧泰愚、1945年以来の独裁政権の大統領たちの名前もほぼろくでなしだとボクは思っていますが、その時代を生き抜いたのが金大中というわけですね。
朴正煕の暗殺事件の直後、金大中自身は獄中で知った光州事件ですが、その惨状の実写映像もすごいですが、それから10数年、全羅道に帰ってきた金大中の姿と、それを迎える光州の市民たちの姿を映した映像は、やはり圧巻でしたね。大群衆、金大中の涙、スゴイです。震えました。
まあ、偶然ですが、ハンガンというノーベル賞作家の「少年が来る」という、光州事件を描いている哀切極まりない小説を読んでいたこともあって胸打たれました。
韓国の現代史を考える人にとっては、避けては通れない映画といううべきかもしれません。拍手!でした。
つい先だって「戒厳令」を出した大統領がいたこともあって映画館は盛況でメデタイことでしたが、戒厳令の恐ろしさを知らない、まあ、ボクだってわかっているわけではありませんが、若い人には見てほしい映画でした。拍手!
監督 ミン・ファンギ
日本版編集 平野一樹
日本版ナレーション ソウジ・アライ
2024年・129分・G・韓国
英題「Kim Dae Jung on the Road」
2024・12・23・no168・元町映画館no275