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山本陽子「入門 日本美術史」(ちくま新書)
![]() 市民図書館にシャーロット・マリンズという人の「若い読者のための美術史」(すばる舎)を返しに行って、新入荷の棚をのぞいていて見つけました。こんどは日本美術史です。山本陽子「入門 日本美術史」(ちくま新書)です。 山本陽子さんは、他にも日本美術史について入門書をお書きになっている研究者のようですが、お年を拝見して借りることにしました。1955年生まれ、ボクと、ほぼ、同い年です。何の意味もありませんけど(笑) ボクの中では日本美術史については辻惟雄の「日本美術の歴史」(東大出版)で、 ベンキョウし終えた! つもりがありましたが、で、その本は、今も手元にありますが、内容は 忘却の彼方に行くへ不明(笑) です(笑)。 というわけで、本書です。下に目次を貼りましたが、埴輪、土偶から狩野芳崖、岡倉天心まで、全部で15章、ボクにとって、 これは?、ああ、そうか! と目から鱗で、中でも面白いかったのが飛鳥、白鳳から運慶・快慶までの仏像彫刻の解説、まあ、同じ時代なのですが、平安から室町への浄土信仰関連の建築から絵画のお話でした。 たとえば、第4章、「浄土信仰―死後のために頑張る?」で阿弥陀如来像の解説はこんな感じです。 鳳凰堂(宇治)の主、阿弥陀如来像である。末法の世の人々を救済してくれる仏だから、さて、どれほど頼もしいかと期待したのなら、ちょっと気が抜けてしまうかもしれない。やる気満々の仏像ではないからだ。目はちょっと垂れ目だし、肩の力も抜けて、下腹もちょっと垂れている。気のいい中間管理職のような「ゆるい」阿弥陀如来なのだ。一体、こんな仏像のどこがいいのか。 話題になっているのはこの仏像ですね。宇治の平等院のご本尊さんのようです。 ![]() この仏像なら、「ねえ、極楽入れて」と頼まれれば、苦笑しながら「まあ、しようがありませんね」と受け入れてくれそうだ。そんな「ゆるさ」、言い換えれば懐の広さが、当時の貴族たちに好まれる秘訣だったのかもしれない。 いかがでしょう、引用をご覧になっておわかりだと思うのですが、読みやすいんですよね。この本も、所謂、入門書ということで「文体」、「語り口・口調」に気を遣っていらっしゃのがよくわかります。 で、この本の著者も女性なのです。シャーロット・マリンズのように、まあ、フェミニズムの鋭角な主張はありませんが、穏やかな男女の平等性の意識は底流していますね。 忘れていたり、知らなかったりしたことを、あれこれ楽しませていただいて、ちょっと夢中で読み終えました。まあ、また、すぐに忘れるのですが、何しろ真っ白になってしまうのが不安なわけで、映画でも、本でも、なにはともあれ、 イン・プットが大事! が合言葉の生活は楽しいですね。 まあ、若い人がお読みになって、日本美術とかに興味をお持ちになるきっかけ本としては、なかなかよくできていますよ、いかがですか? 目次
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