|
100days100bookcovers 98日目
アガサ・クリスティー『検察側の証人』・ビリー・ワイルダー映画『情婦』 ![]() 前回のKOBAYASIさんの投稿が2月の中旬でしたので、もう3か月ほど経ってしまいました。これほど遅くなった言い訳をさせてください。 実は90歳近くで一人暮らしの母が、昨年暮れから脊柱管狭窄症の痛みがどんどん強くなってきたため、整形外科医院探しやリハビリ通院の送迎やらで急に忙しくなってきていました。その上、妹が、いつもは元気でバリバリ働いて、なおかつ母のそばにいてくれたのに、突然入院してしまいました。大きな手術は回避できたものの、今までのような生活ができなくなっています。そうこうしているうちに、こんどは私が、顔面帯状疱疹になってしまいました。意外にしんどくて、全く食欲もなく一日中眠る日が何日も続いて我ながらびっくりしてしました。 顔半分に赤黒い発疹が出て、美貌(こういう時用の言葉かも?)が台無しになってしまいました。今は発疹はだいぶ消えてきたけれど、神経痛はまだ残っています。母の方は、不思議なもので、もう入院寸前かという状態でしたのに、私の頼りなさに直面して、また気力だけはしっかりしだして、なんとかもちこたえてくれようとしています。 そんなこんなで、遅れてしまいました。今のうちになんとか投稿したいと思いながらもだらだらとしてだだ遅れですね。もっと早くに今回は休ませてほしいというべきだったと反省しきりです。 でも『ためらいの倫理学 戦争・性・物語』とは逆の、自分の倫理感にためらわなかったドン・キホーテのようなアイルランド人の評伝、しかも著者はペルー人という小説を紹介したかったのです。 コロナ禍の頃に、図書館で偶然目について読みだした本です。スケールの大きさに圧倒された本なので、ぜひご紹介したかったのです。今回、いい機会だと、また図書館から借りて、あわただしい生活の中で少しづつ主人公の年だてなどを作りながら読んでいました。この本はどうせあまり借りられていないみたい、少しくらい延滞するか、あるいは期限内に返却してすぐまた借りようと思っていたら、なんと、順番待ちの人が出てきました。物好きな人がほかにもいるもんだと思いながらも途中までしか読んでないのに返却するほかありません。このところの私には読み直すのは無理そうなので。 ちなみにその本はマリオ・バルガス・リョサの『ケルト人の夢』です。お時間のある方には、ぜひ読んでいただきたいなあと思います。 で、KOBAYASIさんのご紹介の本に再び戻って、装丁の素敵な『いずれ すべては 海に中に』 サラ・ピンスカー・著 (竹書房文庫)は、図書館ですぐに借りてきて読んでみました。 なかなか不思議な着想ですね。なかでも、とってもKOBAYASIさんらしいなと感じたのは、この小説が音楽から影響を受けて、いい感じの小説を作っているとの紹介でした。歌と小説とのつながり。その着想の本はいくつもありますが、私は、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』あたりも秀逸かなあと思うのです。このあたりで決まりかな。 今回は、 文芸作品と映画 ということで、アガサ・クリスティーの戯曲『検察側の証人』とビリー・ワイルダーの映画『情婦』ということにします。 まず、この戯曲はじつは、今回初めて読んだので、紹介はあとまわし。まずは、ビリー・ワイルダー監督の映画『情婦』の感想を書きます。 ![]() 最初の第二次世界大戦直後の廃墟のドイツのシーンが印象的だけど、劇中劇なのかなと思ったり。と思ううちに、場面は明るく軽薄なほどのイギリスの弁護士事務所に急転。退院したばかりの太っちょ弁護士と彼の世話をする付き添い看護婦のドタバタ喜劇がとても面白い。さすが、ビリー・ワイルダー。きっと伏線が張ってあるのだろう。 それから、やや調子のよすぎる若者がでてきてさらにコメディがテンポよく続くけれど、実はその若者が弁護の依頼人だとわかる。この若者は殺人の容疑をかけられ逮捕されるらしい。弁護士はその若者の依頼を受けるかどうするかを決めなければならない。しかし、若者の協力者であるはずの美しい妻(マレーネ・ディートリヒだもの)が、どういうわけか夫に薄情で、ひょっとすると彼を裏切るのかと感じさせる。こういう設定で、法廷劇が展開されていく。 弁護士か、若者か、あるいは彼の妻か、ときには被害者の家政婦か、誰の立場で映画を見ればいいのか混乱しながらも、ずるい悪人を見逃したくない気持ちになって熱を入れて見入ってしまった映画です。ミステリーのネタバレはここまでにします。 私は『情婦』という題に思い入れをいれて、まさかミステリーだとも知らずに見ました。どんどん思い込みをひっくりかえされてなかなか理解が追い付かなかったけれど、見終わってから何度も思い返して、いい意味でやられたなあと思った点がいくつもありました。このあと、ビリー・ワイルダーの映画をみることが何度かありましたが、コメディと苦みの共存やら、伏線の張り方とか、戦争の傷痕とかが感じられるようになりました。 ただ、この映画の題名が『情婦』というのが、どうしてもすっきりと受け入れにくくて、原題をチェックしたら、“WITNESS FOR THE PROSECUTION”『検察側の証人』原作アガサ・クリスティーだと、その後で知りました。また、TVドラマでも別の演出で2本くらい見たことがあります。実は今回、映画にも別の役者や演出のものがあることもGoogleで知りました。ただ、私は、いまのところ、ビリー・ワイルダー監督版が一番気に入っています。 そして、今回初めて、原作の戯曲を読みました。戯曲って読みにくいと思い込んでましたが、以前映画を見ているせいか、ていねいなト書きもあって、とても読みやすかったです。そして、私の頭の中ではシーンがいくつもあったように思っていたのですが、原作では、場面は二つきりで、まさに言葉や立ち位置を効果的に駆使した舞台劇だったということを初めて知りました。 文庫本末尾の解説にも、ロンドンやニューヨークの劇場でもロングランだったとのこと、そのあとでのビリー・ワイルダー監督の映画化だったとか。今回、初めて知りました。 アガサ・クリスティーって、本当にすごい作家だなあと改めて思います。もっぱらデビッド・スーシェ演じるポワロのTVドラマのファンですが、小説もいくつかは読んでいます。特に、ミステリーの禁じ手を逆手にとった『アクロイド殺人事件』『オリエント急行殺人事件』『そして誰もいなくなった』の3作品はその着想におどろかざるをえませんでした。 勝手に自己完結してしまいますが、今回あらためて、ビリー・ワイルダー監督の映画と、アガサ・クリスティーの作品が山のようにあるので、これからもぼちぼち楽しみにできるなあと思ってしまいました。 遅くなって申し訳ありません。SIMADAさん、よろしくお願い申し上げます。E・DEGUTI2024・05・20
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[読書案内「BookCoverChallenge」2020・05] カテゴリの最新記事
|