ブラディ・コーベット「ブルータリスト」シネリーブル神戸 チラシの写真を見て、「おや、今度は建築家?」
まあ、そんな気分で215分座りました。第2次大戦直後、ナチスの収容所暮らしからアメリカに、おそらく、自由を求めて移住したハンガリーの建築家ラースロー・トートという人の半生に苦悩を描いた作品でした。
ブルータリストという言葉に、なんとなく聞き覚えがあったのですが、コンクリートをそのままむき出しに使う、まあ、ポストモダン以降は減ったらしいのですが、日本では丹下健三の香川県庁とかが有名で、そういえば、フレデリック・ワイズマンが映画で撮ったボストン市庁舎とかもその建築スタイルだったと思うのですが、忘れていて、この映画を見ながら思い出しました。
見たのはブラディ・コーベット監督の「ブルータリスト」です。
で、見たのは2025年の2月21日ですが、感想を書きあぐねているうちに3月になって、チラシの「大本命!」
どおり、アメリカのアカデミー賞で主演男優賞なんだそうです。賞を受けた主演のエイドリアン・ブロディという俳優さんは、まあ、「戦場のピアニスト」もそうでしたが、もう、そこにいるだけで哀しい男なのですね(笑)。
大したものです(笑)。
で、映画を見ながら、その彼が演じるラースロー・トートという建築家がアメリカの草原の真ん中に立てる教会に、収容所での絶望の日々、粗末な寝台から見上げていた、コンクリートのままの、狭くて寒い部屋の天井に、幽かに見えていたかもしれない希望の光を再現しようとしているのを知って、胸打たれましたね。
自由を求めてやってきたはずのアメリカに、到底、理解されるはずのない、あのとき、収容所の1室に差し込んだ希望の光を表現しようという、彼の孤独というか、意地というか、ナチスに否定され、収容所で生死の境をさまよわざるをえなかったバウハウスのモダニズム思想の究極の真実
の表現だと感じました。
映画の終盤「あなたは彼をレイプした!」
妻のエルジェーベトがアメリカのお金持ちを批判しますが、意味深でしたね。
付け加えれば、この映画の迫力はヨーロッパからも、アメリカからも、逃げていく先としてのイスラエルの、この時代からの50年の歴史を、ボクたちが知りながら見ているということですね。このラースロー・トートの悲劇的人生が、パレスチナの人たちの新たな悲劇的事態の導火線になっているんじゃないか。上で、意味深といいましたが、アメリカはヨーロッパからのユダヤ難民を厄介払いしたんじゃないか。と、まあ、穿ったことを、あれこれ考えてしまう作品でしたが、なにはともあれ、拍手!でした。
監督・脚本・製作 ブラディ・コーベット
脚本 モナ・ファストボールド
撮影 ロル・クローリー
美術 ジュディ・ベッカー
編集 ダービド・ヤンチョ
音楽 ダニエル・ブルンバーグ
キャスト
エイドリアン・ブロディ(ラースロー・トート 建築家)
フェリシティ・ジョーンズ(エルジェーベト・トート 妻)
ラフィー・キャシディ(ジョーフィア 姪)
ガイ・ピアース(ハリソン・ヴァン・ビューレン アメリカの実業家)
ジョー・アルウィン(ハリー 実業家の息子)
ステイシー・マーティン
イザック・ド・バンコレ
アレッサンドロ・ニボラ
2024年・215分・R15+・アメリカ・イギリス・ハンガリー合作
原題「The Brutalist」
2025・02・21・no025・シネリーブル神戸no304