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カテゴリ:映画「元町映画館」でお昼寝
パオラ・コルテッレージ「ドマーニ」元町映画館
![]() 「いいな!」と感心した映画程、感想が書けないことが、このところの徘徊老人ですが、主人公の名前はデリアでした。パオラ・コルテッレージという、この映画の監督である女性が扮する1946年くらいの、敗戦国イタリアのローマで暮らす主婦です。 映画の冒頭、亭主と二人で寝ていたベッドで彼女が目覚め、隣で、まあ、すでに目覚めていたらしい亭主に「おはよう」と声をかけると、亭主がいきなり彼女にビンタをくらわします。 「なんなんだ?」 2025年、極東の島国で70歳を過ぎた老人が 啞然! とするシーンで始まりました。 見たのはパオラ・コルテッレージ監督のイタリア映画「ドマーニ」でした。 ![]() 主人公のデリアは、今でいえば訪問看護婦のような仕事とか、傘の修繕工場とか、洗濯屋さんとか、あれこれのパート仕事で日銭を稼いで、家に帰ると寝たきりの義父の介護が待っていて、稼いできたお金は夫に没収されてしまいます。子供も、年頃の娘を筆頭に、わんぱく兄弟の計三人がいて、 ちょっと大変ですね!(笑) というか、笑ってますが、笑えない境遇の中年女性です。 そこから物語が始まるのですが、そこまでの描写で、 結構、納得の映像! で、白黒画面ということもあって、 これって、1950年くらいのイタリア映画なのかな? とか思いながら、最後のオチには拍手!拍手!で見終えました。 ![]() 喜劇で行こう!という目論見からでしょうね、映画のはじまりの頃に、 彼女宛てに配達される一通の封書 の意味を、後から思えば、見ているこっちにミス・リードさせようという魂胆の展開だったのですが、その目論見も笑い飛ばせるくらいに 爽快な結末で、納得!、拍手!でした。 ![]() 「男性的振舞いのダメさ=勝敗に関わらず戦場で戦ったという男性的自己陶酔に溺れ続け、女性たちに忍従を求める甘え」とでもいうべき、おそらく、当時の復員兵たちが当然視していたであろう、時代的・歴史的視点を思い浮かべて見るなら、この映画で、製作者・監督が主人公デリアに求めさせた女性の自立という考え方の尊さが、単なる男女平等思想や、教科書で習うフェミニズム思想を越えた 深さとリアル を持っているといえるのではないでしょうか。 まあ、そんな感想で映画館を出て、チラシとかで再確認するまで 古い作品だと思い込んでいました。が、実は2023年に作られた、いわば最新の、だからコロナ騒ぎの全体主義の再来を体験し、世界中のいたるところで「戦前的」社会風潮がひろがりはじめた今の映画なのだということに気づいて、もう一度、感心しました。 映画の中で、イタリア語がわからない駐留アメリカ兵が、親切にしてくれた彼女の名前を聞いた返事の「急いでいるの!」という言葉を、彼女の名前だと思い込んで、 「急いでいる女!」と呼ぶのが、実はネタばらしだったですが、デリアが急いでいかなけれならない場所として選んだ、あの場所の意味を男女を問わず、もう一度、考え始める事態にボクたちは直面しているのではないでしょうか? それを、 笑いで問いかけてみせた、監督パオラ・コルテッレージに拍手! ですね。 繰り返しになりますが痛快で爽快な作品でした。 監督・脚本 パオラ・コルテッレージ 製作 マリオ・ジャナーニ ロレンツォ・ガンガロッサ 脚本 フリオ・アンドレオッティ ジュリア・カレンダ 撮影 ダビデ・レオーネ 美術 パオラ・コメンチーニ 衣装 アルベルト・モレッティ 編集 バレンティーナ・マリアーニ 音楽 レーレ・マルキテッリ キャスト パオラ・コルテッレージ(デリア 主婦) バレリオ・マスタンドレア(イヴァーノ 夫) ジョルジョ・コランジェリ(義父) ロマーナ・マッジョーラ・ベルガーノ(マルチェッラ 娘) ビニーチョ・マルキオーニ(ニーノ 自動車整備士) エマヌエラ・ファネッリ(マリーザ 市場の青果屋さん・友だち) 2023年・118分・G・イタリア 原題「C'e ancora domani」 2025・04・01・no051・元町映画館no295
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