ヴィム・ヴェンダース「ハメット」シネマ神戸 フランシス・フォード・コッポラの特集の最後は、コッポラが製作の指揮をしたらしい映画で、監督はヴィム・ベンダースの「ハメット」でした。1982年に作られた作品だそうです。
監督はコッポラではありませんが、製作の指揮をとったのが彼だという事で特集にライン・アップされたようです。 実は、この作品、封切で見た記憶があるのですが、何にも覚えていませんでした。まあ、40年前のことですからね。
映画のはじまりはタイプライターを叩いていた男が、原稿の終わりにThe Endと打ち終わり、一つの作品が完成するシーンでしたが、この男こそ、作中ではサミュエルと呼ばれていますが、当時、ボクが夢中になって読んでいた、「血の収穫」なんかのハードボイルド・ミステリー作家、サミュエル・ダシール・ハメットなのですね。
原稿を完成したハメットの部屋に、昔の同業者、私立探偵のライアンが登場するところから物語は始まりますが、見終えて思ったのは、ぶっちゃけ、この映画の本当の主人公はタイプライターでしたね。
まあ、そこが、ヴェンダースらしいというか、ハメットが書きあげた小説=虚構と、現実に起こっている事件を、微妙に重ね合わせながら物語を進めていくのですが、書き手こそが探偵であるというずれの中で、書き手のハメットが、自分の書いたはずの事件で危機に遭遇するという、事件の謎の向うに、現実と小説のギャップを暗示
しながら、映画が繰り返し
愛用のタイプライターを映し出すシーン
が、ボクには面白かったですね。
ただ、その、ドラマの二重構造というアイデアが、映画で、実際に進行する事件を凡庸なものにというか、芝居じみた展開に見せてしまうのが残念ですが、今ではあまり見かけなくなった黒い旧式のタイプライターが、とても印象に残った作品でした。
あんまり、ウケないでしょうが、ボクには面白かったですね。なんてったって、20代に熱中した、もと探偵で、ハードボイルドの創始者ハメットが主役の作品ですからね(笑)。拍手!
監督 ヴィム・ヴェンダース
製作 フレッド・ルース ロナルド・コルビー ドン・ゲスト
製作総指揮 フランシス・フォード・コッポラ
原作 ジョー・ゴアズ
脚本 トーマス・ポープ ロス・トーマス デニス・オフラハティ
撮影 フィリップ・H・ラスロップ ジョセフ・バイロック
美術 ディーン・タボウラリス ユージーン・リー
音楽 ジョン・バリー
キャスト
フレデリック・フォレスト(ハメット)
ピーター・ボイル(ジミー・ライアン 探偵)
マリル・ヘナー(キット、隣室の女性)
リディア・レイ(クリスタル・リン 謎の女)
ロイ・キニア
エリシャ・クック・Jr.
R・G・アームストロング
リチャード・ブラッドフォード
1982年・97分・アメリカ
原題「Hammett」
2025・04・25・no67・シネマ神戸no26