大九明子「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」シネリーブル神戸 最近、若い大学生とかがいろいろ頑張るらしい日本の映画というのは、ちょっと、敬遠しているのですが、同じくらいの御年の、だから、まあ、老人のお友達の評判が結構よいということで、この映画を見ました。
大九明子監督の「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」です。 ボクはプロ野球の中継以外のテレビも見ませんし、若い方たちの間で流行っているらしい若いタレントさんや歌い手さんのことも、もちろん、お笑いタレントさんとかについても、まあ、ほぼ、全く知りません。
というわけで、大九明子という監督もチラシに写っている、小西君を演じた萩原利久くんも桜田さんの
河合優実さんというお二人の俳優さんも知りませんでした。この映画の原作がジャルジャルとかいう名前で活躍している福徳秀介という方の小説だということですが、もちろん、知りませんでした。映画を見ていて「あっ、知ってる!」
だったのは主役のお二人が通う関西大学のキャンパスと、もう一人の登場人物さっちゃんを演じる伊東蒼さんが京阪三条から鴨川を渡っていく学校と、小西君とさっちゃんがバイトしている風呂屋の親父を演じる古田新太さんだけでしたね(笑)。
で、映画ですが、筋の運びには、いくらなんでも、ちょっとひねりすぎというか、やりすぎの感じで「ああ、そうですか・・・?」
だったのですが、主人公の小西君と、彼が出会う二人の女性のそれぞれの語り、特に同じバイトをしていて、彼に告白することになるさっちゃんの長台詞には納得でした。伊東蒼さんという女優さん、頑張っていらっしゃいましたね。拍手!拍手!でしたよ。
言葉ではいえない「私」、その「私」を抱えながら出会う、おそらくお互いに理解し合うことが出来そうもない他者との関係、街角に座るワンちゃんにしか心をひらけない小西君、団子頭にすることでガードする桜田さん、「好き」を「好(この)き」としか言えないさっちゃん。
みなさん、ことばが指し示す世界と、自分の目が見ている、自分のこころが感じている世界とのギャップに、実にナイーブに苦しんでいる若い人たちの姿をこそ描こうとしている大九明子監督に拍手!でした。
ただね、70歳の老人はふと思うのですね。「そのギャップ、ずーっと抱えて、人は生きていくんじゃないかな?」
って(笑)。
監督・脚本 大九明子
原作 福徳秀介
撮影 中村夏葉
編集 米田博之
キャスト
萩原利久(小西徹)
河合優実(桜田花)
伊東蒼(さっちゃん・桜田咲)
黒崎煌代(山崎)
安齋肇(マスター)
古田新太(佐々木・風呂屋のオヤジ)
2024年・127分・G・日本
2025・05・12・no073・シネリーブル神戸no312