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カテゴリ:読書案内「翻訳小説・詩・他」
尹 東柱(ユン・ドンジュ)「空と風と星と詩」( 書肆侃侃房)
![]() 季節の移りゆく空は韓国の人々に国民詩人として知られている尹東柱の「空と風と星と詩」(書肆侃侃房)という詩集が「日韓対訳詩選集」として2025年2月16日に出版されたようで、市民図書館の新入荷の棚で見つけて借り出して読みました。 右側から開いていくと「日本語版」で、左から開くと「韓国語版」という装丁になっていて、真ん中に、詩人をめぐる古今の写真集が配置されている本です。残念ながら韓国語が全く読めないボクは日本語版からページを繰るしかないのですが、日本語訳は伊吹郷の訳です。伊吹郷の訳が、本書で採用されている経緯については「日本語訳に寄せて」という尹一柱(ユンイルジュ)という詩人の弟さんの文章が終わりについていますから、関心のある方はそれをお読みください。 で、詩集の始まりは、この詩です。 序詩 このページで始まり、90ページに渡る詩集の中で心に残ったのが、最初に載せた「星を数える夜」です。 で、この詩の終わりのページにこんな文章があります。 ひと握りの灰になった東柱兄の遺骨が帰ってきた時、私たちは龍井から二百里離れた豆満江沿いの韓国の土地にある上三杉駅まで迎えに行った。そこで遺骨は父の胸から私が受け取って抱き、長い長い豆満江、橋を歩いて渡った。2月末のとても寒く曇った日、豆満江の橋はどうしてそれほど長く見えたのか……皆黙々とそれぞれの欝憤をこらえながら一言も発しなかった。それは東柱兄にとって、愛した故国との最後の別れを告げる橋だった。 これが1945年のことだったのか、それよりずっと後のことだったのか、それは、この文章ではわからないのですが「ひと握りの灰」になった詩人の遺稿を収集することもまた大変なことだったろうと思います。 詩人のプロフィールについては本省の紹介記事を下に貼っておきます。この読書案内は、とりあえず、今の日本という社会で暮らしている10代、20代の若い人たちに、1945年、独立運動の容疑でとらわれ、大日本帝国の刑務所で獄死したという同志社大学の学生であった、若い詩人がいたこと、そして彼が残した詩があるということに気付いてほしいという思いの記事です。 2000年以降にお生まれになった人たちにとって、遠い昔の出来事であるのかもしれませんが、この詩集を残した詩人が韓国では「国民詩人」として読まれていることの意味を考え始めていただければ嬉しいですね。 尹東柱[ユンドンジュ]
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最終更新日
2025.06.09 23:29:10
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