佐古忠彦「太陽(ティダ)の運命」元町映画館 「米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー」というドキュメンタリィーで、第2次大戦後の、いや、近代以降の沖縄の「魂」の所在!
を描いた佐古忠彦監督が、今度は「太陽(ティダ)の運命」という、それぞれ国と激しく対峙した2人の沖縄県知事の姿を通して、沖縄現代史に切り込んだドキュメンタリーを作ったというので見ました。
沖縄本土復帰後の第4代知事・大田昌秀(任期1990~98年)と第7代知事・翁長雄志(任期2014~18年)は、本土的な思考法によっては、保守、革新と安易に色づけされる政治的立場は正反対でありながらも、ともに沖縄の県民から幅広い支持を集め、保革にとらわれず県政を牽引した人物ですが、二人の「太陽(ティダ)=リーダー」の記録
を丹念に編集した映画でした。
大田知事による1995年の軍用地強制使用の代理署名拒否。翁長知事による2015年の辺野古埋め立て承認の取り消し。それぞれ、国家の下部機構として従属させられてきた、地方公共団体の首長による住民自治の勇気ある態度表明、文字通り、あるべき政治的行動として、ボクにとっては忘れられない出来事でした。
映画は「日本」という国家を相手どって法廷で争い、民主主義や地方自治の本来のあり方、「まず、そこで生きている人たちの生活があって、国家はそのあとにあるべきものではないか?」
という、沖縄だからこその、真実の問い
を投げかけ続けながら、志半ばにして去った二人の姿を真摯に描いた作品でした。なぜ、沖縄に米軍基地なのか?
日米安保の必要性や、中国の脅威を口にし、沖縄に米軍基地があることを既製の事実として当然視する国家や世論に対して、基地の存在を疑い、拒否しようとした二人の政治家の、文字通り命がけの異議申し立ては、今では「歴史の一コマ」の残像
のように過去にい追いやっているのが「日本」という国の現実ですが、この映画には、彼らの異議申し立てが明らかにした、日本という国の欺瞞に満ちた矛盾を、二人の政治家の、それぞれの半生を追うことで、なんとか記録に残そうとする誠実な作品でした。
まあ、ボク自身は、70年代の沖縄返還以来の歴史過程の中で生きてきた、今や老人ですが、20代、30代の方に見てほしい作品ですね。とりあえず、沖縄の米軍基地が沖縄の人たちにとってどういうものなのか!?
ということを知り始めるだけでもいいですね。
監督 佐古忠彦
撮影 福田安美
編集 庄子尚慶
語り 山根基世
音楽 兼松衆 阿部玲子 澤田佳歩 佐久間奏 栗原真葉 三木深
テーマ曲 比嘉恒敏
劇中歌歌唱 でいご娘
エンディングテーマ演奏 辺土名直子
キャスト
大田昌秀
翁長雄志
2025年・129分・G・日本
2025・05・20・no077・元町映画館no302