井筒和幸「パッチギ!」こたつシネマ
パソコンを相手にブログに載せる記事をコセコセいじっていて、ああ、風呂にでもいこうかとノソノソと居間に出てみると、同居人のチッチキ夫人はテレビに夢中のご様子です。「何見てるの?」
「パッチギよ!」
ゴソゴソ服を脱ぎながら画面を見ていて、そのまま座り込みました。
井筒和幸監督2004年の映画「パッチギ!」です。まあ、誰がどうおっしゃろうと、ボクにとっては傑作!以外の何物でもない映画です。
後半の山場でした。 今さら、筋運びがどうだとか、演技がどうだとかいうつもりはありません。妙に男前の少年が「イムジン川」を歌って、見たことのある美少女が本気で自転車をこいでいます。
いいシーンですねえ(笑)。涙があふれだしてきてとまりません(笑)。 映画が描いている1960年代の終わりから70年代のはじめ、ボクは高校生になったころで、歌われる「イムジン川」も、「この素晴らしい愛をもう一度」も、「悲しくてやりきれない」も高校時代のクラス歌集に載っていた愛唱歌です。なんか、いろいろある行事のためにクラスだか、学年だかで歌集を作ったりするのが当たり前の学校で、カラオケなんかまだない頃でしたが、歌集に載っている全曲をアカペラで熱唱できるのがクラスのリーダーの任務だという時代でした。
そういう、懐かしさが映画からあふれてくることも、多分、涙の理由の一つでしょうが、作品のインパクトはもっと別のところにあると、あらためて思いました。
高校生たちが、本気で「パッチギ!」している姿ですね。We Shall Overcome Somedayの叫びです!
この歌も歌集にあって、高校三年間、それぞれのクラスの委員長であったボクは歌えたはずです。残念ながら、50年、まあ、歌詞も忘れてしまいましたし、夢は、もちろん、かなっていないですけど(笑)。 監督の井筒和幸は1952年の生まれで、ボクより二つ年長、だから、団塊、全共闘じゃないんですね。微妙ですけど、彼の映画の底には、全共闘世代に特有のニヒリズムみたいなものがなくて、シラケているのに、テレビに出てきてはしゃいでしまうというか、お調子者的な楽観主義が流れているようで、ボクはそこが好きなんですね。
監督・脚本 井筒和幸
原案 松山猛
脚本 羽原大介
製作 李鳳宇 川島晴男 石川富康 川崎代治 細野義朗
撮影 山本英夫
編集 冨田伸子
音楽 加藤和彦
キャスト
塩谷瞬
高岡蒼佑
沢尻エリカ
楊原京子
尾上寛之
真木よう子
小出恵介
波岡一喜
オダギリジョー
キムラ緑子
ケンドーコバヤシ
桐谷健太
出口哲也
江口のりこ
ちすん
平松豊
加瀬亮
坂口拓
木下ほうか
長原成樹
徳井優
小市慢太郎
笑福亭松之助
ぼんちおさむ
笹野高史
松澤一之
余貴美子
大友康平
前田吟
光石研
2004年・117分・日本
配給 シネカノン
2025・06・14・no088・こたつシネマno20