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カテゴリ:映画「元町映画館」でお昼寝
王兵(ワン・ビン)「青春 — 苦 —」元町映画館
![]() ワン・ビン監督の「青春 三部作」の第二部、「青春 — 苦 —」を見終えました。 帰郷を前に、自分自身の帳簿を失ってしまった少年が、スマホに撮っておいた帳簿の写真を見せるのですが、「そんなものは証拠にならない」と半年分の給金の支払いを拒絶され、帰郷の旅費さえままならず不貞腐れています。226分! 途中で休憩が入る長尺ドキュメンタリィーでした。 農民工と呼ばれている 出稼ぎ労働者たちの「労働」の実態! が、賃金の支払い、賃上げ交渉、経営者の夜逃げ、経営者が逃げた後始末、カメラは、職工だけでなく、経営者とその家族、同じ町で暮らす親戚の発言や物腰を撮り続けます。少年工が走ればカメラも走ります。 「こんなところは撮るなよ。」 という言葉をかいくぐるようにしてカメラは回り続けます。 仕事と集団生活に疲れた少女が、家に帰りたいと同郷の、多分、同じ街で商売をしているらしい親戚のおじさんに頼み込もうとして、けんもほろろに無視されて、ほっぽり出されてしまいます。 少年への支払いを拒絶した社長だったか、別の社長さんだったか、借金に追われて夜逃げします。残されたミシンの売却が年配の従業員と買い取り業者の間で相談され、ミシンが消えて人もいなくなった作業場が映ります。 「かーえりたーい♪ かえれない♪」 そんな歌が流行っていた時代がありましたよね。帰ったって、電気もガスコンロもない、もっと貧しい家があるだけなんです。 これがグローバルと呼ばれている現代世界の実態です。お金持ちの国々で、子供たちが、無邪気に遊んで泥んこになってもお母さんたちが気にもかけない、安いミッキーマウスの子供服はこうして出来上がります。農民工と呼ばれている、この少年や少女たち。子連れで出稼ぎに来て、競うようにミシンを踏んでいる労働者たちが一着数元(1元は20円くらい)で縫い上げている子供服が、いったいいくらで売られているのかボクは知りませんが、 この世界が、どこかで歪んでいる!ことは実感します。 ![]() これからも、この監督の作品が紹介される限り見続けようと思います。見たから何をしようというわけでも、何かができるというわけでもありません。しかし、 現実の本当の姿! を記録し続けようという、こういう監督がいるなら、見続けようという老人がいてもいいのではないでしょうか。 この長大なフィルムの中で「青春」を生きている少年や、少女たちに拍手!カメラを回しつづけているワン・ビン監督に拍手!でした。 監督・撮影 ワン・ビン 撮影 シャン・シャオホイ ソン・ヤン ディン・ビーハン リウ・シェンホイ 前田佳孝 編集 ドミニク・オブレー シュー・ビンユエン リヨ・ゴン 2024年・226分・フランス・ルクセンブルク・オランダ合作 原題「青春 苦」・英題「Youth (Hard Times)」 2025・05・27・no080・元町映画館no304 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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