田村文「いつかあなたに出会ってほしい本」(河出書房新社)
市民図書館の新着の棚で見つけました。田村文「いつかあなたに出会ってほしい本」(河出書房新社)です。「14歳の世渡り術」というシリーズの1冊です。「面白すぎて積読できない160冊」だそうです。
週刊読書案内とか名づけて本の紹介をやってきた老人としては、ちょっと手に取らないわけにいかな本ですね。 ページを繰ると、最初の1冊が中島敦の「山月記」(岩波文庫)で、2冊目が夏目漱石の「こころ」(新潮文庫)です。いいですねえ、ボクにとっては、それぞれ、40年ほど仕事にしていた作品です。
ちょっと「こころ」の紹介の一節を引いてみます。
学生時代、先生は親友Kと同じ女性を愛した。先生がKを出し抜き女性との結婚を決めた直後、Kが自ら命を絶つ―。友情か恋愛か、三角関係の苦悩、嫉妬、友の死による罪悪感・・・・。倫理よりエゴを優先させた自分を、先生は許せなかった。
だが先生は徐々に、Kの自殺の理由は失恋だけではないと思い始める。「世の中にたった一人住んでいる」との思いでいる先生は、Kも淋しさのせいで死を選んだのではないか気づくのだ。
先生はかつて私に言った。「自由と独立と己れとに充ちた現代に生れた我々は、その犠牲としてみんなこの淋しみを味わわなくてはならないのでしょう」
現代を生きる私たちも、この淋しさと無縁ではない。自立した自由な精神を持とうすれば、その代償として孤独や淋しさと向き合うことになる。だからこの小説は今もなお、生々しく、切実なのだ。(P25)
いかがでしょうか。読者として想定されているのは14歳ですから、中学2年生くらいの方に対して語っていらっしゃる紹介だと思いますが、高校3年生の授業で、ここまでたどり着くのはなかなか難しかったですね。 著者の田村文という方は1965年生まれで、共同通信社という新聞社の文化部の記者をなさっている方のようです。
まあ、口調と分析がよくできる国語の先生を思わせるところがあって、ちょっとメンドクサイのですが、読みたい本を探すには便利かもですね(笑)。
パラパラと目を通してみると、160冊のラインアップも文学史的スタンダード作品に、読むと面白い実力作家、詩人、それに中村哲とか、宮脇俊三とかも抜かりなく入っていてジャンルを横断しています。要するに、本好き育成計画というわけで、好感を持ちましたよ。
できれば、この本で見つけて、オッ!と思って原本を手に取る人が増えることを祈ります。ホントは160冊のラインアップを貼りたい所なんですけど、ちょっと面倒なので、一応、目次を貼っておきますね。
目次
第1章 読み継がれるのには訳がある
第2章 異世界を歩く
第3章 詩歌の言葉にノックアウト
第4章 旅があなたを鍛える
第5章 人も社会も多様性に満ちている
第6章 芸術の深淵に触れる
第7章 読み始めたら止まらない
第8章 豊かに流れる子どもの時間
第9章 外国の物語に浸る
第10章 文学という愉楽
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追記
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