茂木綾子「フィシスの波文」元町映画館
題名に聞き覚えがあって気になって見ました。2023年のドキュメンタリーのアンコール上映だそうです。茂木綾子という写真家の方が監督としてお撮りになった「フィシスの波文」という作品です。 「フィシスってなんやねん?」
見ながら、ずっと、そう思っていました。見終えて映画館の支配人(?)のTさんと目が合ったので尋ねました。「フィジクスが物理やから、自然ちゃいます?」
「はい、それは、ボクも、まあ、わかっているつもりなんですけど。」
地球なり、宇宙なり、まあ、人間がここに存在する、この場所で、人間を取り巻いている人為的なものではないものすべてが「人間」に及ぼしたものを、人間はどんなふうに受け取ってきたのか?
まあ、それを考え始めると目の前にある襖に描かれた文様だったり、織物の図柄だったりに、人間が人間をし始めた頃から受け取ったフィシスの形が時間を越えて残されているんじゃないかっていうんです。これって、すごくない?
まあ、そういう作品でした。一番すごいなあと思ったのは、今でも江戸時代とおんなじ絵柄を襖紙に刷っていらっしゃる唐長さんという京都の職人さんが、ばれんとかじゃなくて素手で紙を擦っていらっしゃったことですね。
色むらが出たり、ズレたりするんじゃないかと思うんですが、そこが、多分、肝なんですね。古くからの版木があって、石や植物から作った顔料があって、その年、その年の楮の和紙があって、それを手で擦る。そこに浮かび上がってくる文様こそが「フィシスの波文」というわけなのですね。今、この時の「フィシス」が作り出す「文様」は時間を越えるんですね。
今回のアンコール上映では、元の作品のエンド・ロールのあとに映画の「音」を演奏していたフレッド・フリスという方の音を作っていく過程を撮ったフィルムが加えられていました。これが、素晴らしかったですね。
ピアノとかギターとかの音を電気的に造形していくプロセスなのですが、そこまで映画が描いてきた、太古以来のフィシスを思いおこさせる映像と、一歩間違えれば雑音でしかないような、電気的に作られていく音が、見事に共鳴していくさまには唸るしかなかったですね。 いや、ホント、いいものを見ました。拍手!
監督・脚本・編集 茂木綾子
プロデューサー 河合早苗
サウンド ウエヤマトモコ
音楽 フレッド・フリス
タイトル考案 中沢新一
宣伝美術 須山悠里
キャスト
千田堅吉(唐長主人)
千田郁子(唐長夫人)
鶴岡真弓(人類学者)
ピエール=アレクシィ・デュマ(エルメス・ディレクター)
戸村浩(造形家)
皆川明(デザイナー)
門別徳司(アイヌ漁師)
貝澤貢男(アイヌ工芸師)
2023年・85分・G・日本
2026・02・06・no027・元町映画館no344