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高橋源一郎・辻信一「弱さの思想」(大月書店) その当時、それぞれが明治学院大学の先生であったお二人、文化人類学の辻信一さんと小説家の高橋源一郎さんが2010年4月から「弱さの研究」というテーマで始められた共同研究は、「弱さの思想」、「雑の思想」「あいだの思想」(それぞれ大月書店)という、3冊の対談集に纏められて10年がかりで完結していたようですが、2026年の、今になって、研究のゴールにあたる「あいだの思想」の面白さにハマって、「雑の思想」、「弱さに思想」と逆方向から読みなおしました。 というわけで、今日の案内は、出発点にあたる「弱さの思想」という対談集です。
これが高橋源一郎さんが大学に出された研究の趣意書だそうです。 2010年当時の、まあ、今でもそうだと思いますが、いわゆる「新自由主義」的な、競争・効率を至上主義としたグローバル社会という風潮が蔓延し始めた時代の中で、競争に勝つ「強さ」に対して、「弱さ」に着目した鋭さが研究のキモですね。 面白いのは、研究が始まって1年後、「強さ」を自惚れていた現代社会が東日本大震災という自然の「強さ」の前に、その「脆さ」を露呈するという事態が、お二人の研究に深さと広さを与えているところですね。 「社会」と「個人」という二項対立を前提とする「強さ」と「弱さ」という、言ってしまえば人間様様的な概念そのものの構造が「自然」の「強さ」の現前によって、実に、あっけなく、ひっくり返るという出来事によって二人の研究は、重層的な深さを獲得することことになったといえばいいのでしょうか。 ちょうどその時代に「弱者」である退職老人生活に突入し、70歳を越えた老人には、お二人の対談、フィールドワークとして出てくる「べてるの家」をめぐる考察、「祝島の反原発」の姿、まあ、他にも知らなかったことがいろいろ報告されていて、まあ、実にタイムリィーで、一から十まで 「うん、うん、そうそう。」「へえー、そういう活動しているんだ!」の連発でした。 70年間、何の気なしに暮らしてきた社会に対して、初めてかもしれません。「自然」の中で生きてきた自分自身もふくめた人間社会の諸相について、マジメに、具体的に考え始めるモチベーションを与えてくれる面白い本でした。 とりあえず、目次を貼っておきます。 2026-no026-1241 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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