「詩 たのしいライト・ヴァース 日本編」(河出書房新社)
こんな本あるよ!
まあ、そういう気分です。一年ほど前に「詩 たのしいライト・ヴァース 世界編」(河出書房新社)を案内しましたが、今日は「詩 たのしいライト・ヴァース 日本編」(河出書房新社)です。市民図書館の新刊の棚で見つけました。 1 煖炉棚上陳列品一覧 谷川俊太郎編
2 動物園の珍しい動物 金関寿夫編
3 いどの中 岸田今日子編
4 とひとひ 雨あがり 浜田義一郎編
こんな目次で240ページ余り、何篇の作品が入っているのか数えきれません。編者の谷川俊太郎さんと岸田衿子さんは詩人、金関寿夫さんは英文学者、濱田義一郎さんは狂歌とか川柳、まあ、江戸文学の研究者です。
ボクが、いま、手にしているのは2025年の新刊本ですが、原本は1980年、81年に書肆山田という本屋さんから出された「日本のライトヴァース1~4」を、1冊にまとめて復刊した本です。
「ああ、やっぱりそうだよな・・・」
そんな、ため息が出てしまいますが、編集なさった4人の方たちはもうこの世にはいらっしゃいません。 ライト・ヴァースという言葉の意味は前回少し説明したので、今日は実物からです。谷川俊太郎さんが巻頭に選んでいらっしゃるのがこの詩です。
土 藤富保夫
土管のなかをのぞいて待っていた
遂にゴリラが入ってきた
なにがどう可笑しいのかうまくいえませんが…(笑)。で、わかる、わかるがこれ。
意味 川崎洋
秋子「オルガンほしいなあ」
父 「そのうち買ってやるよ」
秋子「どうして そのうちなの」
父 「お金ないもん」
秋子「お父さんのお金とお母さんのお金といっしょにすればいいじゃない」
父、ふんぜんとして、父の稼ぎで家中食べていけるということを説明し・・・
父 「・・・だからさ お父さんが原稿を書いて それでお金がきて ね? それをお母さんに渡すんだよ」
秋子「くずしてくださいって?」
どうしてもわかってくれない
巻末の「いどの中」あとがきで岸田衿子さんがこう書いていらっしゃいます。
お菓子を選ぶのなら自信があるけれど、詩を選ぶなって、とても出来そうにないと思われました。そのくせ、めったにないほど面白いことのようだったので、ついお引き受けしてしまったのです。
「ライト・ヴァース」という言葉の、本当の意味に副っているのか、そもそも私自身、本当の意味が判っているのかどうかについては、この際ちょっと知らん顔をすることにして。
こどもの為に書かれたか、書いたふりをしてあるもの、大人の為に書かれていても、どこかに「こどもごころ」が感じられるもの、笑ってしまうもの、何となく怖いもの、なるべく曲が附いているもの。ただ、あまり歌として有名だと、詩を読んでいても、その向こうに曲が聞こえて来て、純粋な鑑賞を妨げられます。それにあまり大流行したものは、おかしさも少し麻痺してしまうので、ご遠慮することにしました。どんなに好きでも抒情的な詩はいれないことにしようと思っていたのに、見方によってはとてもユーモラスに感じられて、迷ったりしました。
どこか私の知らない所に、きっと、すてきな面白い詩がひそんでいるにちがいないとおもうと、欲が出て来て、箱のふたは未だ閉めたくない気持ちです。けれどもとりあえず、そんなわけで箱の中には、柏もちもマロングラッセも、おせんべもペロペロキャンディも、ピクニックに行く時のように、大事に詰めることにしました。どこで何が食べたくなるか、わかりませんものね。和田誠さんが、どんな楽しい包み紙や仕切りを作って下さるか待ち遠しいし、何度もお買い物につきあって下さった書肆山田さん、ありがとうございました。
一九八一年初夏
で、岸田さんがお選びになった作品で、ふふふと笑ったのを一つ。
殺陣師一代 梅本たかし
寄らば斬るぞの 大見得も
派手な浮名の 影法師
花の舞台じゃ あの竹光も
抜けば玉散る 氷の刃(やいば)でよ
殺陣師一代 殺陣師一代
身をきざむ
「なにかしてけつかんねん。
リアリジュームがなんじゃい。
わいにはわいの殺陣があるんや。
今にきっと大向こうを
うならして見せたるわい。」
チョンと杵の音に 幕が明きゃ
意地がもたげる 楽屋うら
どうせ捨身の チャンバラ稼業
雁が飛んでく 赤城のお山でよ
俺の忠治が 俺の忠治が
見得をきる
「のんだくれの罰当たりいうて、
みんなに笑われながら、わいは一生を刀にかけて
生きてきたんや。ええか、
ここで一丁わいが忠治の最後の殺陣をつけたるさかいなァ。
見とれよ。これが
わいの、わいの、最後の忠治やでェ。」
廻り舞台の 宿命(さだめ)なら
ここが汐時 見きりどき
女房すまぬと こころで詫びて
おとこ一代 ふるえる刀よ
殺陣師段平 殺陣師段平
血のなみだ
梅本たかしさんという、たしか、昭和の作詞家の歌ですね。岸田さんがお選びになっているのが1981年ですから、かなり古いですが、20年ほど前に真山一郎という方が歌っていらっしゃったこともあるようです。
他にも、引用したい詩はたくさんあります。面白いですよ。
2026 no040-1255