|
カテゴリ:映画「シネリーブル神戸」でお昼寝
ジャファル・パナヒ「シンプル・アクシデント 偶然」シネリーブル神戸 神戸では連休の後半封切られてから大入りが続いている様子で、ビビって避けていましたが連休も終わって、週も変わったので大丈夫かな?と思って出かけましたが、ヤッパリ大入りでした。「えー、なんで、こんなに?」 シネリーブルの受付にいらっしゃった、若い支配人さんとの会話ですが、それにしても何にも知らないのに、我ながら呆れますが、今日見たのは2025年のカンヌ映画祭のパルムドール作品、ジャファル・パナヒというイランの監督の「シンプル・アクシデント 偶然」でした。 映画の中でも、登場人物の話題として出て来て、ちょっと笑いましたが、久しぶりというか、ベケットの「ゴドーを待ちながら」というお芝居のパターンの映画でした。 ゴドー待ちのパターンっていうのは、まあ、要するに際限のない会話ですよね。 で、まあ、この映画の肝は、今、箱の中に閉じ込めている男をどうしたらいいのかという問いを5人がかりで議論するというところですね。 ワヒドさんという男性がかつてエグバルと名乗っていた刑務所の看守だか、取調官だかを偶然見つけて拉致するんですね。でも、困ったことに「かつて」のその時、反政府主義者として捕まって、ひどい目にあわされたワヒドさんは目隠しされていて、彼にひどい仕打ちをしたエグバルという男の「顔」を知らないんです。男がシリアとの戦争で片足を失っていたということと「声」しか知らないんです。 で、拉致したこの男が エグバルかどうか?困ったワヒドさんは、取りあえず男を箱に詰めてバンに載せ、エグバルを知っていて、同じようにひどい目にあわされた人を探して映画が始まるんです。 カメラマンの女性シヴァ、花嫁姿のゴリとその彼氏のアリ、乱暴者のハミド、バンに乗り合わせる人はその五人。五人とも、逮捕されたときには目隠しをされていたので片足の男であるという情報以外には「声」だけなんです、知っているのは。 「顔」を知らない。 で、延々と議論です。殺して土に埋めるか、思う存分殴るけるをするか、それをやっちゃあ、あいつらと同じだから放り出すか、予想通り結論は出ません。だって、ゴドー待ちなんですから。 で、なんと、ゴドーからなのか、ゴドーになのか電話がかかってくるんです。 拉致していた男には臨月の奥さんがいて、その奥さんが破水して気を失っているって、ゴドーならぬニルファーちゃんという少女、男の娘さんから箱の中の男に電話がかかってきて、それをとったワヒドさん始め、みなさん、てんやわんやの人助けで無事男子誕生。 議論どころじゃなくなっちゃったメンバーは解散、残されたワヒドさん、男を箱から出して、対決すると、なぜか開き直った男がエグバルだと自白します。 さて、どうするのか。放免しちゃうんですよね。そこが、まず、この映画の凄いところでしたね。 結局、何にもおこらない???映画はラストを迎えます。で、そのラストがなんとも不気味なんです。 イランの映画です。イスラエルとアメリカが、今、戦争を仕掛けている国ですが、ジャファル・パナヒ監督は、どうも、ワヒドさんたちが反政府の罪で捕まった頃、映画を作ることを禁じられて国外に出た人らしいのです。で、今回の戦争に際して帰国なさったらしいのですが、その話を知ったボクには「ワヒドさんは私だ」なんとなくそんな声が聞こえてきそうな気がしました。 国家権力や、その手先としてひどいことをしていて、権力自体が変わると知らん顔をして生き延びる人って、今がそうだという国もありますが、そういう時代のそういう国には、かならずいらっしゃるんですよね。ナチスにしろ、戦前の特高にしろ、KCIA、KGB、モサド、CIA・・・・。 共通するのは、 なぜか「顔」がないんです。足音だけはして、後ろから迫ってきて、反政府だの、反革命だの、アカだの、シロだのと好きなようにレッテルを貼って、道が暗かったからという理由で、偶然、通りかかった自動車にはねられて命を落としてしまう犬とか猫のように「人間」を扱う。体制が変わっても「顔」を知られていない特権で、やっていたことは雲散霧消してしまう。 今でも世界中で起こっていますよね。きっと。その時の、その場所で、爆弾が落ちてきたり、銃が撃たれたり、で、命を失う人がいるというのは偶然なんですかね。まあ、そういうことを考えてしまう作品でした。 監督・製作・脚本 ジャファル・パナヒ 製作 フィリップ・マルタン 撮影 アミン・ジャファリ 編集 アミル・エトミナーン キャスト ワヒド・モバシェリ(ワヒド) マルヤム・アフシャリ(シヴァ) ハディス・パクバテン(花嫁ゴリ) マジッド・パナヒ(花婿アリ) モハマッド・アリ・エリヤスメール(ハミド) ジョルジェス・ハシェムザデー(サラル) エブラヒム・アジジ(エグバル) デルマズ・ナジャフィ(エグバルの娘ニルファー) アフサネ・ナジュムアバディ(エグバルの妻) 2025年・103分・G・フランス・イラン・ルクセンブルク合作 原題「Un simple accident」 2026・05・11・no089・シネリーブル神戸no379
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[映画「シネリーブル神戸」でお昼寝] カテゴリの最新記事
|