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ぷち てんてん

残虐記 桐野夏生

10歳の少女が誘拐され1年間あまりを監禁された。
そして25年後小説家となっていた彼女は、失踪する。

彼女の夫が編集者に当てた手紙から始まる。
中身は、妻が残した原稿である。
原稿を書くきっかけは一通の手紙だった。
監禁した犯人からの手紙。
その手紙の最後に
「私のことはゆるしてくれなくてもいいです。私も先生をゆるさないと思います。」と書かれていた。
謎の言葉だ、これは犯人と彼女にしかわからない。

彼女、北村景子は、10歳の時にある男に拉致された。1年余り監禁されていた。
彼女のそれまでの生活そして監禁中の彼女の生活、そして解放されたあとの彼女が書かれている。
誘拐される前も大人びた少女だったのかと思うのだが、監禁生活後の彼女は物の見方も大人になってしまったようだ。
事件後、監禁生活について一切口にしなかったのも、子どもとは思えない判断だ。

真実から身を守るために始まった夢。
毒の夢でバランスを取っているのだろうか。
それは解放されてからも同じだ。むしろ解放されてからのほうがその夢の必要性は高まったのではないだろうか。

10歳の少女(解放された時は11歳の少女)が身を守るというのは、犯人とどうやって折り合って生き抜いて、外への希望を失わずにいるかということ。
しかし、読んでいくとその後の彼女のほうが、身を守らなければならなかった。
周りの好奇の目から、警察、検事、両親からも、精神のバランスを取るために身を守っていた。


誘拐監禁という話題になった事件を思い出させる。
そして、それに反応する市民感情。
この場合善意からだろうが、それは好奇心からでもある。
ここでの彼女の対処の仕方は、あまり薦められないが、その感情はわかるような気がする。

残虐記って、実は監禁されたことよりも、自分で希望を抱いていた周りの大人たちとの戦いの結果なのかもしれないなあ。
現実生活から閉ざされた生活、そこで自然と膨らんでいく自由な外の生活への希望。
解放されてから、実は現実の外の生活はもっと秩序もなく残酷なんだと知る。






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