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テーマ:最近観た映画。(38846)
カテゴリ:~2006年 映画・ドラマ
私は実は見る前、非常に気が重かったのです。
もちろん、見終わっても重い映画でしたが・・ ただ、私の勝手な思いだったのですが、日本側を描くという事で「泣きの場面」を見せ付ける邦画のイメージを持っていたのですね。 しかし、「父親たちの星条旗」を見ても「ミリオンダラー・ベイビー」を見てもイーストウッド監督の映画というのは骨太でしたので、この映画も感傷に流されるものではないと思っていました。 そして、やはり骨太で視点のぶれない映画になっていました。 ぜひご覧になる事をお薦めします。 パンフレットも良かったですよ。 ☆硫黄島からの手紙☆(2006) クリント・イーストウッド監督 渡辺謙・・・・・・・・・・・・・・・栗林中将 二宮和也・・・・・・・・・・・・・・西郷 伊原剛志・・・・・・・・・・・・・・バロン西(西竹一中佐) 加瀬亮・・・・・・・・・・・・・・・清水 中村獅童・・・・・・・・・・・・・・伊藤中尉 裕木奈江・・・・・・・・・・・・・・花子 ストーリー 硫黄島の戦いを日米双方の視点から描く二部作の「父親たちの星条旗」に続く第二弾。 ~~~~~~~~~~~~~~~ 全編トーンを落とした白黒に近い色使いでした。 冒頭から戦場の場面になるのかと身構えていましたら、現代の場面から入っていました。 「父親たちの星条旗」でラストで見せた硫黄島は緑に覆われた島だったのですが、同じ島の全景もトーンを落とすとこの先の展開を予想させるものになっています。 実際にこの島の事を知らない私にとって、今なお砲台の残骸や地下施設の跡などが60年後の現代まで残されているということにまずショックを受けたのでした。 そして、場面は過去に戻り栗林中将がこの島に来た所から始まります。 ~~~~~~~~~~~~ 栗林中将のことが大きく取り上げられていましたので、彼を中心とした構成になっているのかと思っていました。 しかし、前半の米軍が攻撃を仕掛けてくる前までは、栗林中将が大きく取り上げられていると思いましたが、あとは普通の兵士たち、特に二宮君演じる西郷が中心でした。 栗林中将の取った戦略は本当に見事でしたが、それはなんて過酷な事だったのでしょうか。 古参の将校たちが主張するように水際で上陸する米軍を迎え撃てば、華々しく(言い方は悪いのですが)散る事ができたでしょう。 そしてこの島はあっという間に征服された筈です。 しかし、栗林はそれを「否」といったのです。 本土攻撃を遅らせる目的のために、この硫黄島でできるだけ長く米軍をひきつけておかなくてはならないと。 米軍を苦しめたのと同時に自分たちも苦しい戦いを強いたのです。 この栗林中将の軍人としての戦略、その精神をイーストウッド監督は知りたかったのでしょう。 そして、それを教えたかったのだと思います。 「ラストサムライ」ではないですが、「死に様ではなくどういう生き方をしたのか」という事です。 栗林中将はすぐれた軍人でした、ほんとうに。 しかし、平和な時代に栗林中将が生きていたら、彼はその「信念」でどんな風に生きたでしょうか。 彼の精神力、人格をもっと違う形で見せることができたのではないかと思うのです。 一方、一兵士としての西郷たち。 やはりこちらの物語がメインです。 アメリカだろうが日本だろうが、戦場に借り出された人間は同じだと思います。 突撃しろといわれて突撃し、仲間が死んでいくのを何もできずに見守るしかなく次は自分かと思う。 駒のように扱われる兵士たち。 兵士たちが自爆していくシーンは、胸が痛かった、ほんとうに・・・ 栗林中将は先ほども書いたように、自決する事をゆるさなかったのですが、中にはそういう命令を無視して自決の道を選ぶものがいたのです。 当時の日本の「生きて恥をかく事を許さない」「お国の為に清く死ぬ」事をたたえた精神は、多くの死を招いたのですね。 しかし、あの場に自分がいたとしたら、敵に捕まるよりいっそ清く死んでしまったほうが楽ではないかと思ったかもしれません。 そういう教育を受けていたのですし、この場で生き残る方が過酷なのですから。 とはいえもちろん、簡単に死ぬ事を決意できるはずも無いです・・・本当は生きていたいですから。 栗林中将が「家族のために死を決意して戦い、今家族を思って死ぬ事を躊躇する」という事を言っていました。 同じです、誰でも。 とにかく、見ていてむなしくて仕方なかったです。 しかし、この島でこうして戦った人たちがいる、生きた人がいるという事を知った事はとても意義のあることだと思いました。 日本人が描く事ができなかった事をイーストウッド監督が見せてくれるなんてね・・・ 多くの魂がいまだ眠る硫黄島、おろそかにしてはいけないと思うのでした。 もし、現代の日本を彼らが見たら、なんというでしょうか・・・・・・ ~~~~~~~~~~~~~~~ 助演の声の高い二宮君は、よかったです。 助演というよりも主演という感じもしますね。 当時の若者を演じるというよりも、彼そのものが西郷を演じているという感じ。 理不尽さをそのまま声に出し、戦場で逃げ惑い恐怖する等身大の人間でした。 この彼と仲のよい兵士(自爆してしまうんですけど)も良かったですね~。 なんという俳優さんでしょうか?? もうひとり途中から島に配属された清水も、複雑な思いを抱いた青年役で良かったです。 また、バロン西、元オリンピック選手で実在した方なのだそうですが、伊原剛志が熱演していました。 一人白い衿がかっこよかったですね^^) 一方、う~んと唸ったのは中村獅堂演じる伊藤中尉。 軍事教育を受けた厳格な兵士。 しかし極限に追い込まれ、思いがけない行動をとってしまう。 あんな極限状況ではそうなる事もよく分かる。 滑稽だって一瞬思ったんだけど、笑い事じゃないですよ。 そして、決して非難されるべき行動ではないと思う。 難しい役だったろうなあと思いましたね。 渡辺謙さんは、人柄も見せ軍人としてのある意味冷徹な部分も見せ、さすがだと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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