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カテゴリ:読書
初・村上春樹
村上春樹、まったく読むつもりはなかったの。 自分には合わないのじゃないかとなんとなく思っていたもので。 ところが最近、いろんな人と本を回しているんだけど、たまたまこの本をまわしてきてくれたの。そうでも無かったら自分では買う事が無かったでしょうね。 でも読んで良かったわ^^) 読み始めてノスタルジックな印象を受けた。 もちろん昭和のまっただ中という時代背景があるからだろうが。 そしてフランス映画みたいだなあって思ったよ。 だからこの映画をフランスに移住したトラン・アン・ユン監督が映画にして良かったというわけなんだろうね?(もちろん、見ていないのでどうなのかわからないけど・・) 細かな情景の描写、ちょっと関係があるのかどうかわからない日常的な描写。 久しぶりにそんな文章を読んだ気がする。 まあね、最近読んでいる本って推理小説みたいなものが多いし(笑) もっとスピードがあるものばかりだから、ある意味新鮮だった。 そして、そういった描写になれればとても読みやすい小説だった。 若いころこの小説を読んだらたぶんわからないだろう事が、今ならわかるという気がする。 ま…もう少し読むのが若い頃でもよかったかとも思うんだけどね(笑) しかし20代じゃきっと、面白いと思わなかったんじゃないかと思う。 「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」 直子は「私を忘れないで」といった。 20年近くたって、徐々に薄らいでいく記憶を文章にしている。 というわけで、ワタナベの青春時代が語られていくのだ。 当時に戻って書いているのだけれども、時々フッと乾いた視線を感じるよね。 それが青春時代を思い出している20年後の視線なんだろうなあ。 最初、ワタナベの喋り方が面白いというのが良く分からなかった。 緑が「まるでハンフリー・ボガードみたい」 と言っているその喋り方だ。 しかし緑のようにワタナベのせりふをまねしているうちに、ワタナベの喋りが面白くなったのは事実だ。 ワタナベって、女性にもてるよね。 こういう雰囲気を持った人ってもてると思う。 永沢さんが確信的に女の子にもてるのとは違って、自覚していないだろうけどね。 「世界中のジャングルの虎がみんな溶けてバターになってしまうくらい好きだ」って、今時の子は言われてもうれしくないかな?(笑) でも楽しいけどなあ、こういう事言われたら^^) 死をまとわりつかせた直子。 キズキという恋人が亡くなって壊れてしまった心を持っているんだね。 しかしこのキズキとの関係って、一卵性双生児のようなもんだよねえ。 もし、キズキが生きていたとしてもいつか二人の関係は壊れてしまったのじゃないかと思ったな。そして、それによって結局直子の心はやっぱり壊れてしまったかもしれないなって思う。 それは直子も感じていたようだが・・・ キズキがなぜ自殺したのか本人しか分からないことだが、もしかすると直子よりもその変化に気がついていたのが原因なのかなって思った。 しかし、直子の気持はよく分からない部分が多かった。 その分、緑が出てくると一変してにぎやかになり面白い。 ピーチクパーチク雀のようだ。 意外と男性はこういったピーチクパーチクおしゃべりする女の子って好きだよね(笑) 手品のようになんにもない空中からでも「話」を引っ張り出しておしゃべりできる。 とはいえ、彼女の生活にも常に「死」がまとわりついている。 たたきこむように「死」が迫ってくるのに、彼女のエネルギーは生に満ちている。 こんな彼女といたら元気がもらえそうだよね(ちょっとうるさいけど(笑)) ワタナベが二人の女性に惹かれるのもよく分かるな。 他に永沢と一緒に女の子をひっかけるのは、これは女性の私にはよく分からないことだが。 ただレイコさんが言うように、自分を大事にすることは必要だよねと思う。 しかしこの小説、女性を鋭く見ているよね。 直子が少女から大人になったとワタナベが感じる描写があるけれど、少女の肉体から女性のまろやかな肉体に変化してしまったのをちょっぴり残念がっているのが、男だなあって思う。 「全く男ってヤツは」と、私は笑ってしまった(笑) そして性描写は確かにオープンで描写も多いかも。 こんなにオープンな人ばかりって珍しいよね。 この小説を読んでいると、みんなこんな話ばかりしているのかと思っちゃうわよ(笑) ン~~、フラワーチルドレンだっけ? 詳しく知らないけど性を開放しようとしてコミューン生活をした人たちがいたよね。 日本でそれが影響されたかどうかわからないけど、そういった時代があったことは事実だ。 でも、性に関して開放的になっていると思うけれども個人差があるもんだしね。 今の若い子すべてがオープンになったという話は聞かないもんね。 でもね、SEXって結婚したからとか恋人だからとかとは関係ない部分で存在するのかもというのは思う。 さて、もう一人の女性レイコ。 私としては年齢的に近いせいかレイコさんに魅力を感じた。 彼女が「ボンっと」なってしまった原因は、びっくりだったが。 天性のウソツキ少女という設定を持ってくるのも面白いよね。 この女の子のその後も知りたいなあって思う。 レイコさんとワタナベの「二人だけの直子の葬式」そしてその後に二人のシーンはやはり一番感動した。 二人が寝ることに違和感はなかったしね。 レイコさんが「これで死ぬまでもうしなくていいよね」っていうのがいいんだよね。 彼女のまだ続く人生に対する不安も感じられて、彼女なら生きて行ってくれるだろうと思う。 ラストのワタナベの電話ボックスシーンは映像で見たらどんなふうになったんだろう。 ああ、ホント、この小説は青春なんだな、なんて思いながら読み終えた。 自分にもあったであろう青春だけど、こんなに克明に覚えていることはないし何気なく通り過ぎてきてしまったな、なんてね。 でもレイコさんじゃないけど、もう戻りたくないわよ。めんどくさいもん(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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