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カテゴリ:本・コミック書評
「復刊ドットコム奮戦記」左多野渉著(2005年・築地書館)
「復刊ドットコム」というサイトをご存知だろうか?これは、絶版されてしまった書籍を、読者の投票により復刊させることを目的として設立され、復刊希望の書籍に100以上の票が集まれば、復刊ドットコムが出版社及び著者に復刊交渉を行っていくというものである。本著は、その復刊ドットコムを運営する株式会社ブッキングの専務取締役、左多野氏によって書かれ、左多野氏はこの著書の中で、「藤子不二雄Aランド」「ダルタニャン物語」などの復刊裏話や、復刊ドットコムで人気を集めている書籍についてのこと、さらに、復刊という観点から出版業界の現状や提言を記している。 出版業界は、出版不況のあおりを受け、発行部数を抑え、出版点数を増やして売上を確保しようとする傾向にある。だが、その裏で、商品サイクルの短縮化を招き、売れない書籍、売れなくなった書籍は、すぐに「絶版」という状況を生み出してしまっている。発売してからたいぶ経ってからでは手に入らない、いわば「生鮮食品」のようなものになっているのが、今の業界の現状である。 そういう状況では、あとになってから読みたいと思っても読めないし、また芸術的に評価の高い作品が、商業主義優先で埋もれてしまい、作品保護という観点から見れば、あまりにも好ましくない傾向である。それだけにこの復刊ドットコムの試みは、ビジネス面においても、そして作品保護という面においても、非常に興味のあるビジネスと言える。 復刊ドットコムが成功を収めた理由の一つとして、復刊を望むファンとの双方向でのコミュニケーションを図ったことが挙げられるだろう。復刊ドットコム上で投票を募ったことや、ファンサイトとの相互リンク、さらにファンクラブの協力を得るなどして、潜在的かつ確実なニーズを掘り起こし、復刊への道筋を作っていくという、これまでのような見込みで作っていく出版の商売スタイルとは異なる。そして、ファンたちの熱意に応え、どんな事情があろうとも、なんとしても復刊させようとする左多野氏を始めとするブッキング社員の熱意。これには、頭が下がる思いである。真の「ビジネス」とは、こういうことではないかと思うのだ。 不況の中でいかに売れる企画、売れる販売戦略を立てることも大事だろうが、それ以前に、確実なニーズがありながら、見込みによって書籍を生産していく業界体質にも問題がある。左多野氏の言うように、委託販売制から責任販売制への移行は必要だろう。こうした制度そのものにメスを入れていくことが最重要課題ではないだろうか?漫画好きのみならず、業界人も必読である。 ~書籍データ~ <概要> 知られざる名作たちを、その熱きリクエストとともに紹介した「ブックガイド」としても楽しめる一冊。出版界、マンガ界の裏話までよくわかる。業界のタブーも恐れぬ交渉で、数々の本を甦らせてきたエピソードと、出版界のニッチをビジネスにしたその血と汗と涙?のストーリー。日経ビジネスアワードも受賞し、不況といわれる出版業界のなかで唯一成功したベンチャーの仕掛けとは?(楽天ブックスより) <内容> 復刊ドットコムストーリー(設立までのエピソード、「藤子不二雄Aランド」「ダルタニャン物語」復刊裏話など) 復刊リクエストから見える人気の本とは? 本好きのためのパラダイスとは?(出版業界の実態と、業界に対する提言) <復刊ドットコム復刊実績書籍> 『藤子不二雄Aランド』(楽天で購入する) 『ダルタニャン物語』(楽天で購入する) よかったら、クリックお願いします→ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年01月27日 12時09分23秒
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