映画「桐島、部活やめるってよ」
シナリオ 2012年9月号 【掲載シナリオ】 「桐島、部活やめるってよ」「こっぴどい猫」 (雑誌) / シナリオ作家協会新宿バルト9クリエーター系の人にすごく評判がいいんだけど、たぶん、学年一の優等生でスポーツ万能な桐島の不在を、取り巻く人たちを使ってうまく映像化してるところにあるんだろうなあと思う。クラスを引っ張るような主役自体が不在という小説最大の発明を損なわず、大きな事件も起こすことなく普通と違う映画を作った感じ。小説は、クラスのいけてるレイヤーと、いけてないレイヤーのヒエラルキー感をはっきり出して、それぞれの人物にスポットをあてる作りになってる。それは、地語りの文章や、モノローグで説明してる。映画では、不在の桐島に、クラスメートはかなり引っ張り回されていて、「ゴドーを待ちながら」のように、学校で神のような存在の桐島が、学校に来るのを待っている。桐島がやめたってことが、友だち関係に直接あるいは間接的に影響を及ぼしていって、みんなの心をかき乱す。高校生にとって友だちが1人抜けるだけで人間関係や自身の気持ちが変わることを掬った感じ。小説では人物ごとに章立てしてるけど、映画では時間区切りにして多角的に見せることに成功。脚本化のうえでだいぶ考えたんだろうなあ。映画の中で「できるやつは何をやってもできるけど、できないやつは何をやってもダメ」ってセリフがあるんだけど、これ言わせるのって結構勇気いるよね。広報的にはゾンビ映画を作る映画部の神木隆之介が主演扱いだけど、主人公はあくまでも小説と同じ桐島の親友の宏樹。小説の設定、中の幹を残してちゃんとしたエンタテイメントになってた。生徒役はみんな上手いのだけど、特に大後寿々花は印象に残った。男からみて、ちゃんとイラッとしたし、女性からみると好きな男の子をただ見つめるだけにエネルギーを使う彼女に共感するところ多いと思う。