吉本隆明 芸術言語論
「吉本隆明氏、沈黙から芸術まで」ETV特集の吉本隆明の再放送みた。09年に糸井さんがやった講演会のやつ。芸術は経済的価値とは無関係。自己表出と自己表出との出会いにしかその価値は求められない。最後の編集後記。話聞いただけでは、読点のないしゃべりで、全然わからないのですが、言っていることはシンプル。「社会が発達すればするほど、そこでの芸術がいい芸術だと思っているわけだけど、むしろそれは反対に類するわけで、今の芸術ってのが劣るってことはありうるし、あるわけです。それは簡単な言い方をすれば今の人のほうが言葉の使い方でも、まあマルクスの例にすれば、言語の芸術を例にすれば、言葉の使い方も今の人のほうが微細にたくさん使い分けができるようにしているわけですね。たくさんのことを、芸術にしても政治のことも文化のことも思想のことも全部言葉で分化して発達させて、分化していえるようになって、言葉でいえるようにしているわけですね。音楽も同じことで、現代音楽のほうがいいという人もいたりして、なかなかやかましいことになっていて、そうなっているんだけど、本当のことを言うとそういうふうに、野蛮未開な時代はたくさんのことを人間の言葉を費やさなくてすんだ時代の人が、歌とか古い原始作品とかそういうのにをいうときに、気持ちがどうせ入るわけですよ、気分が入るわけですよ。その気分、情操、その他全部そこに集約、関心の範囲が狭いからそこに集約しようとすれば、そこに集約されたことのほうが遙かに強烈に集約されるわけなんです。だから昔の人の芸術のほうが今の人の芸術よりいいんだって。他のことが言葉でしゃべって、相手に通じていて、つまりコミュニケーションするために言葉を吐くってことが多いですから、それは多くなるってことですから、昔はそれが少なかった。何か言葉で何か言おうとすると多少でも芸術的なことを言おうとすると、何か歌になっちゃうというようにしか表現の範囲が狭かったというか、狭いから勢いが、言葉を押し出すときにそれが強力になるわけで、それのほうがよくなるきまっているんですよ。時代的に、だんだんいろんなことに言葉の関心がいろんなことにたくさん多岐にわたる、たくさんの種類のことに言葉を費やす。言葉がどんどん専門分野に拡がっていっちゃってる現代のほうが、現代に芸術的な言葉を吐こうにも早急に吐けるわけでもないし、吐いた言葉が昔の野蛮界の時代の人みたいに、もうそれだけだっていう強烈な心の中の、強烈で情熱で感覚的に見事だとか、情操的にも見事だというふうになりっこないわけで。それがわかりきったことだっていえばわかりきったことなんですが、多くは誤解というか、多くの芸術とはいえない芸術的、芸能的に携わっている人は、そこを誤解して、今の人のほうがたくさんの言葉を知っていてたくさんの音を知っていて、そっちのほうがよくなるに決まっているじゃないかと思っているんだけど、それは芸術に関する限り反対で、芸術は役に立たなんですけど、つまりコミュニケーションとしては何の役にも立たない、言葉が役に立ってない、役に立たないことが芸術の本質ですから、もう経済的な価値みたいなもの増大するほど、今文明が発達して増大すればするほど社会は進歩しているんだけど、芸術に関する限りはできるだけというか、だんだんだんだん衰弱していうか、だんだん減っていくって。そこはやっぱり芸術みたいに、元々社会的価値とか伝達的価値なんか何もないから芸術なんだっていってもいいくらい、そいういう分野のあれの人はいくら頑張ったって、いろんなこと関心を持っているじゃないかって。共通してるのは女の子のことくらいじゃないかって。あとのことはみんなもう目茶苦茶関心が分裂していて、人によっても種類も違うし、こうなってきている時代に、歌だけでこれ、昔の万葉の歌と匹敵しようってたって無茶だよって。向こうは最初っから、自分の全人間力を情操も情緒もそれから音律も全部そこに込め切っちゃってってか、全部を込め切っちゃって書いているんだから、他に関心がないんだから、何か発信しようとすりゃ歌になっちゃうって、そういう人にかなうわけがないじゃないですかってことで。てことは人間ってのは1000年2000年くらいであまり発達してないってことも逆に意味するんだけど、それはぞれで問題なんだけど、芸術はそういう意味で文明的な価値とか、科学的価値も関心も持たないで、そんなことはなかったってことを心のありったけを出せって、出して何か発言しろって言われているだけだから。あるいは逆に発言するとそれしか出てこないっていうふうな時代の人だったわけですから、だからそれは人間っていうものに区別をつけない限り、つまり文明に区別をつけたり、文化教養に区別をつけても、たいした区別ではない。人間の人間としての区別は、1000年も2000年も前の人と違うと思わないほうがいいですよね。同じだと思ったほうがいいですよね。平等である思ったほうがいいと思います」