積んどく? 読んどく?

2008/03/24(月)17:48

坂木司 『先生と僕』

感想(581)

 大学生になった伊藤二葉は極度の怖がりなのに、推理小説研究会に入れられてしまった。途方に暮れる二葉にバイトの誘いの声が。家庭教師を探していたのは中学生の瀬川隼人。家庭教師なんて必要ない成績の隼人は、二葉のミステリの先生になった・・・ ●「先生と僕」  参考書を探していた書店で、二人は電話番号の書かれた付箋が貼られた雑誌を見かける・・・今この業界なかなか大変ですよね。目のつけどころがおもしろい作品でした。 ●「消えた歌声」  誘われてカラオケに行った二葉だったが、小火騒ぎで避難する間に二人の女子高生がいなくなったという・・・あっさりとネタが想像できてしまったのが難点でしょうか。 ●「逃げ水のいるプール」  二人で行った区民プール。区役所の職員らしき男がメモを取っているが、バイトの白井は何やら彼から逃げているようで・・・一種の暗号もの。普通に考えれば、この時季にこんな服装をしているのはおかしいのですが。 ●「額縁の裏」  時間つぶしに自然食品とギャラリーを併設した店。絵の作者の女性と親しくなった二葉だが・・・怪しいところには近づかないのが一番ですね。 ●「見えない盗品」  『・・・ちなみにペットサービス○崎にて収穫予定(笑)』ペットショップでの犯罪を匂わせる掲示板の書込みに、二人は現場で張り込む・・・「先生と僕」もそうですが、こういうことが半ば堂々と行われ、しかも協力したり利用したりする人がいるということが信じられません。  ふんわりとした雰囲気の短編集。坂木さんの新シリーズです。  怖がり、臆病、お人好しで押しに弱いというような二葉のキャラクターを生かした作品が多い反面、どこから切っても坂木印というか、ややマンネリ気味な気がしてなりません。  また、隼人があまりにも無邪気でとても中学生に見えず、かといって妙に頭でっかちでバランスが悪いのもどうかと。こんな中学生いや。  ミステリを読んだ満足感はちょっと得られませんでした。  短編集としては、別段区切りになる終わり方ではないので、まだ続編が出るということでしょうか。 収録作:「先生と僕」「消えた歌声」「逃げ水のいるプール」「額縁の裏」「見えない盗品」 2008年3月17日読了

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