飛行中の機内という逃げ場のない空間でのトラブルは極力避けたいものである。

なるべく搭乗中の段階で目を光らせておいて問題が起こりそうな状況・
起こしそうな人はいないかチェックしている。

お客さんの間でのトラブルは色々あるけど、主な原因は：音か席。

音と言うと、例えばヘッドホンから流れる音量の問題。
これは電車といっしょ。
映画や音楽に夢中になるのはいいけれどついつい音量を上げてフルで楽しんでる人。
クレームの対象になる。

あと話し声。
ある便には親子４人と日本人の中年の女性が座っていた。
子供たちはずっとしゃべってはいたけど、声が大きかった訳ではない。
しかし子供達が口を開く度に中年の女性は怖い顔をして「うるさい！」と注意したり、子供の席を叩いてた。
かわいそうな子供たちはその後無言で過ごすしかなかった。
ご両親は良くあの女性に怒らなかったな、と思う。

ビジネスクラスでの前後２列。
前には夫婦。後ろには無関係の男性二人。
後方の男性たちはそのフライトで意気投合して出発前からずーーーっと喋っていた。
私もあれはどうなんだろう、と思いながら様子を見てた。
４時間ぐらい経ったころ、前の列のご主人が席を立ち、後ろを向いてぶち切れた。
少ーしだけ声をトーンダウンしたけど話し続けた。
かわいそうなのはあの夫婦。
私から見ても後ろの二人は声が大きくてかなり迷惑だったのに、
あのぶち切れた姿しか見てない少し離れた席のお客さんはあのご主人がおかしい、と思ってたのだろう。

席の問題と言えば毎日のように何かある。

通路がいい
窓際がいい
非常口がほしかった
赤ちゃんの隣は勘弁して
２ヶ月前に予約をしたのよ！！
横になりたいから１列探して...

あと添乗員の方で１回だけ困ったことが。
満席のフライトで団体のお客様で一人だけ１列ずれたところにアサインされていた。
添乗員は私のところに来て、はぐれた女性と、あるアメリカ人の男性の席をとりかえてほしい、と言う。
私は男性のところへ行くと彼はもうすでに団体のひとたちの視線を十分感じいたため、
何か問題があるなとは把握していたご様子。
事情を説明してみたけど彼は申し訳なさそうに、
事情は分かるし本当ならかわってあげたいけどインターネットでわざわざその席を指定して、
その日は乗り継ぎもあって疲れてるからどうしても変わりたくない、と言った。
彼が指定してアサインされた席であるのは事実だし、他の方にも事情があるとしても、
一人のお客様を満足させるために関係のないお客様に嫌な思いをさせるのはいかがなものかと思う。
なので添乗員の方にはお詫びをして変えられないことを説明したらとてもご立腹だった。

良く見かける光景だけど、客室乗務員は「この方たちがはぐれてしまったので」と当たり前のように他人に席を変えてもらってる。
私は反対。
だってそこにいる人の事情も知らないし、はぐれた理由だっていくらでもある（チェックインが遅かったとか）。

席のトラブルでダントツの１位を誇るのはやはりリクライニングのこと。
前の人が席を倒してることに対して怒ってる方。
お金を払ってリクライニングできる席をみんな平等に買ってるんだから、それを禁止することはいけない、と思う。
確かにお食事中はあげてほしいとは思うけど、その後はしょうがない。
前の席をフライト中蹴ったり叩いたりするのはやめてほしい。本当に。

あるフライトでの出来事。
突然大声が聞こえてきてエコノミーキャビンの前方のお客さん何人かがいっせいに乗務員呼び出しボタンを押し始めた。
どうやら外国人女性が前に座っていた日本人男性のアームレストに裸足をのせていたところ、
男性がいくら注意してもやめようとしない。
それでもめてた。
女性の言い分は「あなたが席を倒すから足を置く場所がない」。
男性の言い分は「足を人のアームレストに乗せるなんてとんでもない」。
私は話を聞いた感じでは完全に男性の見方だった。

私だったら本当に耐えられないと思う。
人が腕をおくところに足を乗せる行為だけではなく、
やめてほしいと言われても構わず堂々と続ける傲慢な態度と性格の悪さ。

しかし残念なことに男性は口が汚い人で、
「てめーいい加減にしろ～！！バカヤろ～！！」
とものすごい大声で連発するもんだから離れたところから見たり、
事情を知らない人からすれば彼が悪く見える。
パーサーでさえ彼が悪者だと思ってしまい、私が一生懸命に事情を説明して
他の国では知らないけれど少なくて日本人の感覚からすれば
その女性の行為は失礼だと言っておいた。
パーサーが男性と別の場所でお話をしている間、私が改めて女性と話をしてたらなんとこの女、
ひたすら傲慢な態度で「typical Japanese」と彼のことを言って鼻で笑った。
「典型的な日本人」だと。
それに対して日系の航空会社だったら女性のお客様にもひたすら謝るのだろうけれど、
私はその差別的な、しかも最後まで自分の非を認めないどころか分かっていない女に逆切れしてしまった。
「言っておくけど私も日本人。人が手をのせるためのスペースに裸足をのせるなんて不潔だけでなく失礼の上、culturally insensitiveだ」と言って去った。

日本の会社だったら私がしたことは許されないだろうけど、誰にでも頭を下げるのはどうかと思う。

ビジネスクラスに乗っていた女優M.M.と彼女のお母さん。
３席並んでいる列でM.M.、お母さん、赤ちゃん連れの中国人女性、の順番で座っていた。
サービスが終わり、機内の照明が暗くなってしばらくすると呼び出しボタンが鳴った。
M.M.のお母さんだった。
隣の女性がお水をこぼして彼女にもかかったそうでカンカンと怒っていた。
「この人に謝ってほしい」と言う。

乗務員はお客様に安全で快適なフライトを提供するために時と場合によって
いろんなことが要求されるのだが、
「Aさん、Bさんに謝ってください。あなたのせいでBさん怒ってます」
なんてとても言えないし言う立場でもない。
Bさんにそう頼まれても。
いちおうお隣さんにお話をしようとしたけれど日本語も英語も通じない。
そのむねM.M.ママに説明すると「じゃあ中国語できる人を連れてきてよ」と。
（このやりとりの間で恐らくこぼれた水は機内の砂漠並の湿度で乾いたと思われる）

こいいったトラブルが起こるたびに思うのが、乗務員を呼ぶ人と呼ばない人。
状況はさまざまなのでどっちが正しいかとは言えない。
確かに人に言ってもらった方が楽だったり、乗務員が言った方が効果的な場合もある。

しかし多くの場合、乗務員を巻き込んだことによって更に気まずい状況にもなりうる。
特にお隣同士や前後のお席の場合、そーっと私に言わせてもチクった人は誰だかばればれ。
時には隣同士のお客様のところで私が
「Aさんはこう言ってます」
「Bさんは違うと言ってます」
とのように、とっても不自然な状況になることも。
その後何時間も真横で過ごさなきゃいけない相手なので
大人同士としてなんとか自分たちで話し合って解決できないかな、と思う。

それでもダメならお呼びください！すぐにかけつけます。