東方虚空闇今日も、いつもどおりの日々が始まる。日が昇り、明るくなって日が沈む、ただそれだけの日々。 だけど、私の周りはいつも夜。闇の私に、夜はお似合い。 今日も闇に囲まれてその日を過ごすつもりだった。 過ごすつもりだったのに。 今日になってどれくらい経っただろうか。一人、私のところにきた。 男の人だった。彼は私の前に来て、何かを言った。 封印を何か、といっていた気がする。今はもう思い出せないが。 そしてその男は私のリボンに触れて、何かを唱えた。 闇に生きる私には明るすぎる赤いリボンが強く光る。 しばらくすると、私のリボンが・・・外れた。 そして、突然目の前が暗い闇に覆われた。 私の周りが、次々と深い闇に覆われていく。 ……暗い、暗い、夜のとばりよりもなお深い、全てを自分の色に染め上げて、包み込んで消してしまう漆黒の闇。 「私」は今、その闇のまっただ中にいる。 闇は、どこまでも広がって、山を、森を、里を、全てを飲み込んでいく。 この闇は、私が生み出したもの。 これが、私の本当の能力。 あまりにも強すぎて、封印されてしまったほどの力。 私の闇は、私の住む世界を覆っていく。 ……でも。 私の闇は、本当は違う。 私の闇は、悪の象徴の闇でも、何かを奪う闇でも、虚空の闇でもない。 私の闇は、周りの余計な色をその内に取り込んで、周りに安らぎと安心を与える闇。 ……それが、本当の闇。 だから、今の私の、世界を飲み込む闇は違う。 それだったら、こんな力はないほうがいい。 それが、たとえ封印が解けて解放された本当の私だとしても。 ……私は、この世界が好き。 出会ったみんなが大好き。 だから、それを奪ってしまうような力は、私は嫌。 私は、自分自身の闇を振り払って、神社へと向かう。 そこにいる人間が、私の体の闇と心の闇を再び封印してくれることを信じて。 ……時が来るまで、永遠に。 私がそれに気づいたのは何時ごろだっただろうか。 さっきまではまだ普通の空だった気がする。だが、今は違う。 まだ夕方だというのに、遠くのほうからとてつもなく暗い闇が侵食してきている。 あれはきっと彼女の能力だろうが、妙に力が強い気がする。 そういえば今日はめったに見ない人がここらに来ていた気がする。 その人のせいとは決め付けるわけにはいかないが、可能性はあるかもしれない。 多分待っていれば彼女からくるだろう、今日はそんな気がする。 そうと決まれば、いろいろ準備をしなければ。 まずは、神社の前の掃除から始めることにしよう。 まったく、今日はのんびり花見でもしようと思ったのに。 相変わらず人騒がせな彼女だ。 おかしいなぁ、まだお昼のはずなのに。 いつものように蛙を凍らせて遊んでいたら、突然周りが真っ暗になった。 ついさっきまで頭上に浮かんでいたはずの太陽は、今はもうまったく見えない。 また彼女が辺りを暗くして遊んでいるのだろうか。 でもそれにしては範囲が広すぎる気がする。ずっと遠くの方も真っ暗だ。 あの森が闇の発生源のようだ。面白そうだし行ってみることにしよう。 闇の発生源だった森は、外から見たよりもずっと真っ暗闇だった。 しっかりと目を開かないと、5メートル先もろくに見えない。 しばらく歩いていると、闇の中に似合わない、赤い光が見えた。 近くに行ってみると思ったより小さなものだった。 拾い上げると、リボンのようだ。 この赤いリボンには見覚えがある、これは彼女のリボンだ。 確かこのリボンは自分ではずせないって言ってた筈、なのになんで外れてるんだろう。 きっと彼女のところに行けば面白いことがあるに違いない。 闇はあっちに続いているようだ。よし、行ってみよう。 彼女は闇があの神社に続いているということに気づかないまま、闇の続く先を目指して進んでいく。 闇の終わりに見えるものは、本当に面白いことなのか。それはまだわからない。 読み物系一覧に戻る ジャンル別一覧
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