突然から始まる非日常(完成版はこちらにあります)第一話 突然から始まる非日常 「・・・ん?ここはどこだ・・・?」 鳥の鳴き声が聞こえる。朝だろうか。 ・・・っていやいや、俺はさっきまで部屋の中にいたはず。何故こんなところに。 男はそのまま考えをめぐらせる。 確か・・・ 普通にゲームしてて・・・ しばらくしたら何か声が聞こえたんだっけ。 『あら、面白そうな子。こっちにきてみない?』って言ってた気がする。 そしたらゲーム画面に吸い込まれて・・・ 気づいたらここにいて。 あの時やってたゲームは確か東方だったから・・・ここは幻想郷、なのかな。 ・・・にしてもやけに体が重い。幻想郷は地球よりも重力が重いのか・・・? と、視界を自分の下半身のほうに向けると。 誰かが俺の上に乗っている。 「わはー、人間だー」 声の主はとてもうれしそうな顔をしている。 ・・・ん、この娘はもしや・・・ルーミア? とすると・・・まずい。 食われる。 アレな意味じゃなくて字のごとく食われる。 そんな嫌な想像をしてるといきなりルーミアがぐいっと顔を近づけてきた。 「いただきまーす♪」 ・・・・・。逃げるべし。 俺はとっさに横に回転した。ルーミアが「はわわー」といいながら転がっていったがそんなことは気にしていられない。 逃げるぜ。 俺がしばらく逃げていると、後ろからルーミアが追いついてきた。 「まてー、わたしの食料ー」 そのまま弾を撃ってきた。まさか現実でゲームの弾幕を受けるとは思わなかったぜ。 俺は弾幕の隙間を見抜きながら回避する。 だが、これじゃきりがないな・・・ 俺も弾出せないかな、せっかくこっちに来たんだし。 物は試し、と手を前に出して気を集めるポーズをする。 ルーミアは「?」といった感じでこちらを見ている。 「おぉぉ、弾よ出ろー!」 やぁっと気合を込めてみた。 すると、ダダダダダダダという音と共に手の辺りから大量の弾がルーミアに飛んでいった。 「あうあうあうっ」 いくつか直撃したようだ。しばらく空中でふらふらしていたかと思うと、地面にぽてっと落ちてしまった。 気絶・・・したか。よし、今のうちに・・・ ルーミアが気絶している間に俺は近くの川に向かった。 「・・・うー?」 ルーミアが体を起こした。どうやら気がついたようだ。 「大丈夫か?」 俺のせいだが一応聞いておく。 すると突然ルーミアの目が光、 「じんにくー!」 といいながら飛び掛ってきた。正直予想していたのでくるっと身をかわし、かわりにルーミアに魚を突き出した。 「ほぇ?」 ルーミアがきょとんとして魚を見ている。 「さすがに俺は食われたくないからな。かわりに魚をこれだけやるからさ」 そう言って、俺は袋につめこんだ大量の魚を見せた。 ルーミアはしばらくその中をじーっと見ていたが、だんだん目がキラキラしてきて、突然 「わーい、ありがとー!」 と言って飛びかかりながら抱きついてきた。 「何、俺を食わないことに対するお礼、ってことで」 ルーミアの背中をぽんぽん叩きながら俺は言った。 そして約1時間で魚の半分を平らげたルーミアが、突然俺に聞いてきた。 「そういえば、あなたの名前はなんていうのー?」 そういえば名前言ってなかったな。言う暇なんてなかったが。 「俺か?んー・・・」 木の棒を拾って、地面に名前を書く。 「外郎、これが俺の名前さ」 でも多分間違えるかな・・・と思っていたら案の定。 「そとろー?」 ルーミアが笑顔のままで聞いてきた。 「いや、確かにそとろーっぽいけど外郎。ういろうな」 一応二回言う。でもルーミアの思考能力じゃ今日一日じゃ無理かな・・・ 「うん、わかったー」 本当にわかっているのだろうか・・・ その後しばらく遊んでいると、夜になってきた。 「じゃあ、そろそろかえるねー」 ルーミアがふわふわと空中に浮き始めた。 「あぁ、じゃあまたなー」 ルーミアに手を振る。 「また明日もくるね、そとろー」 何の罪悪感もない顔でその名前を呼ばれても困るのだが。 「だからういろうだって・・・」 とりあえず訂正しておく。何度も言ってればいつか直るだろう。 そしてルーミアは帰っていった。 「さて・・・どうせしばらく帰れそうもないし、せっかくだから明日からルーミアに色々と連れて行ってもらうか・・・」 そう独り言を言うと、そこらへんに生えている草を使って、簡単なハンモックを作って木にひっかけて、寝ることにした。 明日から何が始まるのやら。 |