東方外夜伝第一話「突然から始まる非日常」
(外郎氏との協同企画。原版はフリーページにて掲載。今回分の原文はこちら)6/9修正:こちらに制限による削減前のUPが。「…ん?ここはどこだ…?」俺はどこか、知らない場所で仰向けになって寝ていた。どこからか鳥の鳴き声が聞こえてくる。今の時刻は、周りの明るさからして、多分夜だろうか。……って、ちょっと待て。俺はさっきまで自分の部屋で、いつものようにのんびりとゲームをしていたはず。何故、突然こんなところに?なぜ夜なんだ?っていうより、夜なのに鳥の鳴き声が聞こえてくるっておかしくないか?空気も、夜とは思えない雰囲気だし…俺はとりあえず、そのまま考えをめぐらせることにした。確か、あの時……俺は何も変わることなく、いつものようにゲームをしていた。でも、確かこの時は、あの東方シリーズ6作目の、ストーリーモード1面をやっていた気がする。そしたら突然、どこからともなく声が聞こえてきたような気がした。それは、女の人の声だった気がする。最初は何かの聞き間違いかとも思ったけど、誰かが俺に対して言ったような感じがした。俺の耳に聞こえてきた、その声は…『あなた、中々面白そうね。試しにこっちに来てみる気はないかしら?』そうやって言っていた。その言葉を、「なんだかよくわからない」と思いつつもつい頭を上下に振ってしまった。今からすると、恐らくそれが原因なのだろう。そしたら、急激に目の前が暗く、意識が遠くなってきて……意識が途切れる直前に、どこかに落とされるような感覚に陥ったような気もするけどそれはよく覚えていない。そして、気づいたら今ここにいて。今思い出せる内容とわかる内容は、それくらいだろうか。……それにしても、さっきからやけに体が重い。何故だ?そう思いながら、頭を起こして視界を自分の足のほうに向けると。…誰かが、俺の上に乗っていた。その体つきから言って、女の子であるのは間違いない。それも、外見は自分より少しばかり幼い少女といった感じだ。「わー、人間だー」俺に乗っかっている張本人は、何故かとてもうれしそうな顔をしている。人間だーだなんてわざわざ言うってことは、この子は人間じゃないんだろうか。とすると、妖怪か?…って、妖怪なんて単語が出てくるなんて、最近東方ばっかやりすぎかな。…ん?東方?そういえば、この少女の服装、どこかで見たことがある。全体的に白地の長袖の上から着ている黒い服と黒いスカート。髪は金髪のショートヘア、頭についている赤いリボンが映える。この娘はもしや……ルーミア?もしそうだとすると、非常にまずい。食われる。アレな意味じゃなくて、読んで字のごとく彼女の食料にされてしまう。そんな嫌な想像をしてると、いきなりルーミアと思われる少女がぐいっと顔を近づけてきた。「いただきまーす♪」……何も言うまい。これは間違いなくルーミアだ。とすると、生身な人間である俺になんとかする術はない。三十六計逃げるにしかず、だ。とにかく色んな疑問は横に置いといて、この場から逃げることにした。まずは、この乗っかられてる状況をなんとかしないといけない。なので、まずは俺は力を込めて大きく横に回転した。ルーミアが「はわわー」といいながら、俺からずり落ちて転がっていったがそんなことは気にしていられない。それよりとにかく、逃げるのが最優先。素早く起き上がって、全速力で駆け出した。しかし、当然獲物が逃げたら追いかけてくるわけであって。「まてー、わたしの食料ー」待てと言われても待つわけにはいかない。普通の人間なら、自分が食われるとわかってて逃げないはずはない。「むー、仕方ない……えいっ!」なんとルーミアは、どこからか弾を発生させ、それを俺めがけて撃ってきた。まさか、現実でゲームの弾幕を受けることになるとは。そんなことを考えてるということは、脳にまだ余裕があるんだろうか。俺は、地面にいる俺に向かって飛んでくる弾を、ほぼ反射的に避ける。避けながら、とにかく走る。他に、何も方法はない。だが、これじゃきりがないな。そう思った、丁度その時。ルーミアが、一旦弾幕を張るのを停止した。もう俺を諦めたのかとも思ったが、その考えは3秒後には撤回される。「む~、こうなったら…… 夜符『ナイトバード』!」ルーミアは懐から一枚のカードを取り出し、そう宣言した。あぁ、そうか。これはスペルカード宣言なのか。……って、戦闘のできない俺がスペルカード攻撃受けるのは流石にやばいって。なんとかしないと。だが、なんとかと思ったからと言って攻撃が止むわけでもないし、事態が好転するわけでもない。宣言が終わって発動したスペルカードは、さっきまでより強力な弾幕を発生させる。鳥のような形に広がって飛んでくる、緑色の弾幕。流石に、弾幕初体験の俺には避けようがない。とにかく全速力で走るしかなかった。スペルカードを全力で気合で避けながら走っているうちに、何かが前方に落ちているのを発見した。それは一枚のカードだった。走りながら、それを拾い上げる。それには、そのカードの名前も刻まれていた。もしかしたら、なんとかなるかもしれない。イチかバチか、試してみるか。そう心に決めて、逃げるのをやめて振り返った。急な俺の行動の変化に、ルーミアは驚きの表情でこちらを見ている。この一瞬しか、チャンスはない。「こうなったら! 夢符『封魔陣』!」やぁっ、と気合を込めて、さっき拾ったスペルカードを高らかに宣言した。俺の記憶が正しければ、これは確かカードに封じられた魔物の力で攻撃するスペカだっけか。すると、ドドドドドドという音と共に、掲げたスペルカードから透明な壁のようなものが広がった。多分、これが結界なのだろう。そして展開された魔を封じる陣は、ルーミアの弾幕をかき消してそのままルーミアにぶち当たった。「あうぅっ」さすがにこれは有効打のようだ。封魔陣が消えると、そのまま地面に落下していった。普段から誰かと弾幕を撃ちあっているんだろうし、妖怪なんだから多分大丈夫だろう。でも、一応近寄って彼女の状態を確かめてみる。気絶……したか。よし、それじゃあ今のうちに……丁度良く、逃げ回っているうちに川の近くに来ていたようだ。川原には、程よい大きさの石がごろごろとしている。これくらいの川だったら、前に読んだ本の知識をうまく使えば魚を獲ることだってできそうだ。確か、手頃な石を水に向かっておもいっきり叩きつけると魚が浮いてくるんだっけか。ルーミアが気絶しているうちに、俺は近くの川に向かった。「・・・うー?」どうやら気がついたらしく、ルーミアが体を起こした。ルーミアには、一応ながら俺が一番上に着てた上着をかけてある。まぁ、走ってたせいか暑かったし、倒れた原因は俺なんだし。「大丈夫か?」俺のせいだが一応聞いておく。すると突然ルーミアの目が突如として光り、「じんにくー!」といいながら飛び掛ってきた。これくらいは想定内だったので素早く横に動いて身をかわし、かわりにルーミアにはさっき捕った魚をさし出した。俺が、彼女が寝ている間に頑張ってこしらえたものである。ほとんどが、昔読んだサバイバルの本の知識のおかげなのだが。「ほぇ?」ルーミアはきょとんとして魚を見ている。「さすがに俺は食われたくないからな。そのかわりに魚をこれだけやるから、見逃してくれないか?」そう言って、俺は同じく即席で用意した袋につめこんだ魚を見せた。ルーミアはしばらくその中をじっと見つめていたが、だんだんと目が輝いてきて、「わーい、ありがとー!」と言って飛びかかりながら抱きついてきた。「いや、これは『俺を食わないことに対するお礼』、ってことで」とりあえずいきなり抱きつかれて身動きのとれない俺は、流石に後ろに手をまわすわけにもいかず両腕を宙に余らせながら答えた。そして約1時間で魚の半分を平らげたルーミアが、突然俺に聞いてきた。「そういえば、あなたの名前はなんていうのー?」そういやまだ名前言ってなかったな。もっとも、言う暇なんてなかったんだが。「俺か?んー・・・」そこらへんに落ちていた手頃な枝を拾って、地面に名前を書く。「外郎、これが俺の名前さ」外郎、と書いて『ういろう』と読む。でも、普段からよく間違えられるし、多分間違えるかなー……と思っていたら、案の定。「そとろー?」ルーミアが笑顔のままで聞いてきた。「いや、確かにそとろーっぽいけど外郎。ういろうな」「うん、わかったー」彼女は相変わらず満面の笑みのまま答える。本当にわかっているのだろうかと少し心配になったが、そこはあえて深く考えないことにした。その後しばらくすると、本当に日が沈んでしまった。「本当に」というのは、もともと最初からルーミアのまわりだけ夜のように暗かったからである。本人によると、それが能力なんだとか。「じゃあ、そろそろかえるねー」ルーミアは、再び体を宙に浮かせる。「あぁ、じゃあまたなー」とりあえず、他に返答のしようもないしルーミアに手を振る。「また明日もくるね、そとろー」笑顔で至極当然のように喋り、何処かへと帰っていく彼女。何の罪悪感もない顔でその名前を呼ばれても困るのだが。……っていうか、また明日もここに来るつもりですか貴女は。「だからういろうだって・・・」そのつぶやきは、既に帰ってしまった彼女に聞こえているはずはなかった。「……さて。とりあえずこのままじゃどうしようもないし、せっかくだから明日からルーミアに色々と連れて行ってもらうか・・・」そう独り言を言うと、とりあえずそこらへんに生えている草を使って簡単な寝床のような箇所を作る。そして、今日はもうこれで寝ることにした。本当は屋外でこんな寝方をするのは別の妖怪に襲われたりする可能性もあるし宜しくはないんだが、地形などもまったくわからないんだから仕方がない。下手に移動して迷ってしまうことだって十分にありえるし、今日はずっと走っていたせいでもう足が限界である。少しづつ意識がまどろみに落ちていきながら、俺は今の状況を整理する。まず、ルーミアが出てきたり弾幕ごっこをやったりした辺りから言って、ここは幻想郷だと思って間違いはないだろう。とすると、明日からも暫くはこんな生活なんだろうか。……いや。明日からのことなんて、考えても仕方がないな。なるようになるさ。明日から、何が始まるのやら。<あとがきとか>いやもう。目どころか色々と当てられませんね!これ(ちょ左側のフリーページにある同タイトルのものが原版なんですが、話崩しすぎでしょこれ。色々質問とかあるかもしれませんが全ては原版書きの外郎氏しだいってことでまとめさせていただきます(ちなみに、続きます(ぇー追記:1100文字くらい文字数オーバーしたんであちこち端折りましたorz