東方外夜伝第二話「非日常からはじまる現実」
(外郎氏との協同企画。原版はフリーページにて掲載。今回分の原文はこちら)……ん、朝か。昇ってきた朝日に照らされて、目が覚めた。目を開けると、遥か上空で鳥が飛んでいるのが見える。…いや、あれは鳥じゃなくて妖怪か何かか?まぁいいや、気にしないことにしよう。一度寝て起きてもまだここにいるということは、昨日のことも今も夢ではなく現実だったということか。突然始まった非日常、それが今の俺の現実。何が何なのかわからないが、兎にも角にもここでなんとか生きていくしかないみたいだ。「さて、いい加減起きるか???」いつまでも仰向けに寝ているわけにはいかないので、起き上がってひとまず朝食の準備をする。昨日と同じ方法で魚などを取り、前に植物図鑑で見た「食べれる野草」を何かないかと思い出しつつ手持ちの100円ライターで火を起こして魚を焼く。…このライターもこの食料確保も、いずれは使えなくなる。それまでにもっと安定した手段を見つけないとな…。何気なく火から顔を逸らして遠くを見てみると、そこにはその一箇所だけに夜を集めて貼り付けたような、黒色とは言いがたい光のない真っ暗な球体がふらふらと飛んでいる。あれが何なのかは、見てすぐに判った。なので、さして気にせずに支度を続ける。「あ、そとろーおっはよー」やがて俺のほうに接近してきた闇の球体からは突然少女が出てきて、それが当然かのように俺に飛びついてきた。いきなり飛びついてくるのは想定していなかったので、少しバランスを崩して火に左手の小指が触れてしまった。「ルーミア、俺はそとろーじゃなくて外郎。う、い、ろ、う、だっての。昨日言っただろ」火に触れて若干火傷した左手小指を気遣いながら、ルーミアを俺の体からはがす。そして、わざとイライラを前面に出して指摘する。どう指摘しても変わらないだろうが。「そーなのかー」出た、ルーミアお得意の「そーなのかー」の一文。ルーミアは俺から離れて着地すると、腕を広げて笑顔でそう応えてきた。…まぁ、このポーズは別に嫌いじゃないからいいんだが。……って、そんなことより、支度だ支度。せっかくの魚を焼きすぎてしまってはたまらない。「今日のご飯はなにー?」ルーミアが聞いてくる。魚を焼いているこの状況を見ていて聞いてくるというのも、なんともおかしな話だがそこは敢えて無視して俺も普通に返答する。「んー?ただの焼き魚だが。ルーミアにあげる分はないぞ?」元から自分ひとり分しかないので、嘘は言っていない。というより、そもそも昨日と同じ方法では一人分がギリギリの量しか獲れなかった。昨日あんなに獲れたんだから、仕方ないのだろうか。だがルーミアは、そんなことおかまいなしに「えぇー?」と文句をたれてくる。――いや、君に食わせると俺の分がなくなるから。そう言っても、まだえーえー言ってくる。だがここは敢えてスルーと決め込んだ俺は、これ以上の返答をやめて黙々と魚を焼く。後ろからルーミアが俺を揺さぶったり飛びついてきたりタックルしてきたりしてたが、魚だけは死守した。……左手小指だけでなく、人差し指まで軽い火傷になってしまったが。「ふむ…、もう少し早めに火から出してもよかったかな」表面が若干焦げてしまっていて、それを除かなければいけないため食べづらい。少し焼きすぎてしまったようだ。……俺がもぐもぐと魚を食べている横で、ルーミアが物凄く食べたそうな目でじぃーっとこちらを凝視している。形容するなら、今にも涎が出てきそうな勢いだ。それでも俺が食べ続けていたら、今度はほんの少しだけ、きゅる、と小さな音がした。どうやらルーミアの腹の虫が鳴ったらしい。今朝は何も食べていないのか?さらに、ルーミアを見ながら食べていると今度は少しずつルーミアの目が潤みを帯びてきた。冗談抜きで本当に食べたがっていることがひしひしと伝わってくる。…流石にこれ以上は何かかわいそうだ。正直、昨日も今日も飯を持っていかれてる俺が一番かわいそうな気もするが気のせいだろう。きっと。「……あー、わかったわかった。半分やるよ」「わーい!ありがとう、ういろー!」俺がその一言を言い切る瞬間、感謝の言葉を言いながら一気にこちらに飛んできて魚をパクッと一口で食べた。…あの、それ俺の食いかけ。別のまだ手をつけてない魚はあるんだが……まぁいいか。ルーミアは俺がもう一本渡した分の魚を食べ終わると、「わはー」と一言言ってその場に座りこんだ。どうやら、なんとか落ち着いたようだ。俺もルーミアも食べ終えて、その後始末と火を消す作業を終えて一息つく。「……さて。俺は一体これからどうしよう?」「んー…私が行くところに付いてきてみる?」「どこに行くんだ?一体」「えっとねー、霊夢っていう人のところー」霊夢…どこかで聞いたことがあるな。東方では、主人公の博麗の巫女だったが。「ふむ。じゃあ、行ってみることにするか。道を案内してくれないか?ルーミア」「りょうかいなのだー」俺が道案内を頼むとルーミアはそれをあっさり了承し、先導するために飛び立った。「そとろー、こっちこっちー!」俺を置いて出発したルーミアが、空から俺に呼びかけている。また呼び方がそとろーに戻っているが、それを今正すのはやめておいた。ルーミアの後を追い、俺も歩き出す。幻想郷には来たばかりで、俺はまだ何も知らない。色々と、知らないとな。<あとがきっぽいの>前回から3ヶ月も間を空けちゃって何やってるのさ自分!(今回は、原版からそこまで過剰に離れることなく、スムーズに収まりました。元も前回より短いし、まぁこんなもんかなと。疑問点その他については、前回と同じく原案者の外郎に聞いてくださいということでー(