「面影小町伝」 米村 圭伍
2003年09月 新潮社より谷中の茶汲み娘・お仙は徐福の仙薬で色白美人に大変身。途端に評判の「小町娘」になって、錦絵にも描かれる始末。実はくノ一のお仙、人気が出ては困るのだ。ところが浅草にも美女・お藤が現れ、なんと二人の、幕府もひっくり返る大因縁が明らかになる。小町ブームに沸く江戸の町で伝説の秘剣が邪気を放ち、田沼の陰謀が渦巻く。お色気百倍の大江戸三部作完結編。『錦絵双花伝』改題。(裏表紙 紹介文より)『真田手毬唄』『退屈姫君伝』に続いて同じ作者の作品です。コメディタッチの前2作とは違って、シリアスタッチの時代小説です。秦栖藩改易を狙った幕府の陰謀、出生の秘密の謎を中心に、呪いの宝刀やら超能力といったオカルト的な要素まで出て来ます。娯楽作品としては十分楽しく読めますが、これまでみたいなほのぼのコメディの方が好きだったなー。以下、ネタバレとなりますので間を開けておきます。秦栖藩の家宝であった家康から賜った宝刀が盗み出された。このために秦栖藩は改易となり、その家老は切腹。しかし、この家老の娘として育てられたお藤が、実は盗み出した幕府の間諜である男とその男に惚れて盗み出す手引きをした腰元との間に生まれた娘。しかも腰元が生んだのは双子で、1人がお藤、1人がお仙という複雑な話でした。でもここまでは、まあそんなものかなと思っていたので驚きはなかったです。秦栖藩改易を企てたのは田沼意次。宝刀は田沼の蔵に隠されていました。それを持ち出し、抜いてはならない宝刀を田沼意次の嫡男・田沼意知が抜いてしまう。田沼意知は意気地のない弱い男だったのが、宝刀の魔力で異常に強い力を得て、性格も冷酷で自信満々に変化。それ以上に驚くのは、そんな意知と戦ったお仙が、宝刀の光を浴びたことにより女の体から男へと変貌してしまったことです。小町娘として有名になりすぎたお仙は、忍びの正体がバレないように倉知政之助と結婚しなければならないことになっていました。が、お藤と入れ替わって、自分は大蜘蛛仙太郎と名乗り、男として生きることにするのです。『真田手毬唄』に登場した大蜘蛛仙太郎、てっきりお仙の息子なのかと思っていたら実は本人だったー!超ビックリ!!お仙とお藤が小町娘としてもてはやされている様子は、見ていてちょっと面白かった。本人達は迷惑そうでしたけど。そして、今回はシリアスだったからか、ちょっとエロ多めと感じました。花街のシーンが出たり、お藤が襲われそうになったりとかがあったせいですね。あと関係のない吉原の花魁が巻き込まれて死んだりとか、さりげなく殺人も増えたような?話としては時代小説として面白く読んだけど、もっと明るく楽しい娯楽小説としての期待が大きかったので、やや残念でした。