「おんみつ蜜姫」 米村 圭伍
2004年08月 新潮社より2007年01月 文庫化敵は将軍吉宗さま?父を襲った刺客を追い、音に聞こえたやんちゃ姫・豊後温水藩の蜜が隠密行脚にいざ参る!凛々しい若侍に姿を変え、四国、備前に尾張、江戸。嫁入り話はひとまずおいて、従えるは忍び猫のタマ、謎の忍者・笛吹夕介だ。さあ姫の運命やいかに・・・。尾張柳生の暗躍や天一坊事件などをふまえ、史実と伝奇を変幻自在に行き来する痛快無比のエンターテイメント。(裏表紙 紹介文より)退屈姫君のシリーズより時代が少し前になります。退屈姫君は将軍が10代・家治でしたが、こちらは8代・吉宗。豊後温水藩の蜜姫は藩主・乙梨利重の側室・宇多の娘。豊後の田舎育ちで、乗馬も剣も得意なおてんば姫。参勤交代で国許に戻ってきた利重が、忍者に命を狙われます。利重は温水藩が風見藩と合併するという、秘密の計画があると打ち明け、そのために将軍から命を狙われたに違いない、と考える。蜜姫は、その陰謀を阻止するため家出して旅に出る、という話。母・宇多は諏訪の神社の娘で、甲府徳川家の江戸藩邸に奉公に上がった時に利重に見初められ、側室となりました。甲府宰相・徳川綱豊は宇多が粗略に扱われないよう養女として嫁入らせたので甲府御前とも呼ばれています。嫁入りの際に、お供にと武田忍び・平六を付けてくれました。平六が忍び猫を育てる名人で、唯一残っている忍び猫のタマが蜜姫のお供として一緒に旅に出ることになります。もう一人のお供は、武田忍びの笛吹夕介。武田の忍び猫が絶えてしまったので、平六の飼っていた忍び猫を借り受けたいと宇多を訪ねてきて、蜜姫の用が済んだら貸し出すということで、蜜姫を手伝ってお供をしてくれます。タマが可愛かったです。強くてすごいし。楽しく読みました。以下、ネタバレとなりますので間を開けておきます。乙梨利重は吉宗の差し向けた忍びに命を狙われたと思ったのですが、それは間違い。本当は尾張徳川家の忍びで、それを吉宗の御庭番と見せかけようとしていたのです。尾張徳川家は御三家の一つ。吉宗と将軍の座を争って破れたため、吉宗を追い落とすために、かつて吉宗が手を付けて生ませたご落胤・天一坊を担ぎ出して事件を起こす。温水藩と風見藩はそれに利用されたのです。夕介は武田忍びと偽って近づいてきますが、実は御庭番の先手。陰謀を暴こうとする蜜姫と一緒に、尾張徳川家と戦うのです。更に、冒険には甲府御前も加わります。蜜姫の冒険好きは血筋みたい。今回は武田勝頼の隠した軍用金探しなども入っていました。吉宗が、退屈姫君の時の将軍・家治と違って、ちょっと魅力が足りない感じ。静かに江戸城内を取り仕切っていた家治に対し、ギラギラしている感じです。めだか姫が家治を信頼して仲良しだったのに比べ、蜜姫は全然そんなこともなく。娯楽活劇小説という感じでした。