「デパートへ行こう!」 真保 裕一
2009年08月 講談社より2012年08月 文庫化より明かりの消えた真夜中のデパートにうごめく人影。その日に限って、なぜか居場所をなくした人々が集まってくる。よからぬ企みを抱く女性店員。生きる希望をなくした中年男。訳ありの家出の高校生カップル。道を踏み外した元刑事・・・・。悩める人々がつどう時、奇跡の一夜が訪れる。感涙必至の傑作、ここに登場!(裏表紙紹介文より)鈴善デパート東京本社へ、偶然か必然かある夜、因縁のある人々が集まってきて事件を繰り広げる話です。登場人物が多く、視点が次々と入れ替わっていくし、最初は関係者のつながりがわからない状態で進んで行くので、「この人、何した人だっけ?」と途中ちょっと混乱しました。最後は大団円で、すっきりと読後感のいい話です。軽く読むにはいい本です。以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。鈴善デパートは、秋浦支店の支店長が秋浦市長へ駅前開発の件で賄賂を贈ったとして収賄事件のスキャンダルの中。社長の矢野は創業者の曾孫で、責任を取っていずれ社長辞任を迫られる見込み。後を引き継ぐであろう副社長は、ライバルデパートに吸収される形での合併の推進派。宮瀬が秋浦支店へ行ったのは、矢野が専務になった時。宮瀬は、副社長からの指示で、興信所まで雇って矢野の身辺を探っていたが、興信所の失敗により矢野の知るところになり、矢野により左遷させられたのもの。矢野はその際に、自身の身辺整理のために社内でつきあっていた愛人・真帆とも別れている。矢野は本社での収賄事件の責任問題を話し合う会議の後、デパート内を見て回っていて不審な遺失物を発見し、宝飾品売り場のマネージャーである佐々岡へ渡す。その遺失物は、真帆が捨てられた恨みに、宝飾品を盗み出そうと揃えた泥棒グッズ。中に入っていた警備に関するメモを見た佐々岡は、字から真帆だと察し真帆を脅して言うことを聞かせようと、夜、真帆が忍び込んでくるのを待ち受ける。同日、会社が倒産したために妻にも離縁され、住む家もなく食事にも困るようになった男が、幼い頃の幸せの思い出の象徴であるデパートに来ていた。物陰に隠れ、閉館後のデパートで自殺しようと考えている男は、ロッカーに隠れるに当たり真帆が隠してあった泥棒グッズが邪魔になり外に出してしまう(それが矢野に見つかり宝飾品売り場の佐々岡に預けられた)。同日、元刑事であったが暴力団に取り込まれて警察を辞職した男が、暴力団とモメて怪我を負ってデパートに隠れようと逃げ込んでくる。男は、鈴善のライバルデパートからの依頼で、宮瀬をそそのかして収賄事件を起こさせた。その証拠の品を持っているために、暴力団から追われることに。同日、家出した高校生カップルのコージとユカが行き場がなく、鈴善で夜を過ごそうと隠れて閉館を迎える。実はコージは秋浦市長の息子で、ユカは宮瀬の娘。ユカは、コージの父親が収賄事件を起こしたのは自分の父が賄賂を贈ったせいだと負い目に感じ、コージに宮瀬の娘であることを打ち明けられずにいる。鈴善の生き字引と呼ばれる警備員の半田。東京大空襲の時に鈴善に逃げ込み、祖父を助けに戻った母と生き別れてしまったが、「必ず鈴善に迎えにくるからここで待っていなさい」と言った母の言葉を信じ、鈴善での警備員を続けている。自分の命を救ってくれた鈴善に大きな恩を感じ、その恩を返そうとしている。警備室に遺失物の問い合わせをした矢野は、半田と知り合い、半田の誘いで夜のデパート内の見回りに同行するとこになった。新人警備員の真(まこと)は真帆の恋人。真帆は警備の実態を知るために真に近付いたが、真の誠実さに心苦しさを覚えている。真は以前、鈴善・秋浦支店でホストのような手口で婦人達に多額の商品を売り上げていたが、婦人2人が鈴善のカード決済の日に自殺したことで、心を病み鈴善を退職。鈴善に対して罪滅ぼしをすべきだ、と鈴善の警備員として再就職した。とまあ、こういった人々が夜のデパートで出会い、ある時は助け合い、ある時は対立しながら物語を繰り広げるのです。最後はコージとユカは理解し合って愛を確かめ合い、その2人と真と矢野の証言により真帆が宝飾品を盗もうとしていたことは隠され、佐々岡は真帆とユカを襲った罪&宝飾品を狙っていた罪で捕まり、失業男は屋上から落ちたが半田の機転で命が助かり、その騒ぎがテレビに映って半田の母がそれを見てデパートに駆け付け・・・・と何もかもがうまくいってハッピーエンド。これぞエンターテイメント、という感じでした。登場人物が皆、期待を裏切らない動きをして、気持ち良く読みました。