「いと 運命の子犬」 原田 マハ
写真:秋元 良平2011年03月 文藝春秋より介助犬にならなかった、いと。けれど、その笑顔でみんなに幸せを運んでくれた―『一分間だけ』の原田マハ(文)、『盲導犬クイールの一生』の秋元良平(写真)、珠玉のコンビが贈る奇跡の物語。 (「BOOK」データベースより)介助犬の訓練を受けたが、適正がないと判断されたため、介助犬になることをやめ一般犬として生きることとなった『いと』をめぐる人間達を描いた物語です。海外では、訓練を受けても介助犬になれなかった犬をリジェクト犬(不合格犬)と言うようですが、日本ではキャリアチェンジ犬と言うそうです。つまり、介助犬になれなかったのではなく、介助犬にならない道を選択し、キャリアチェンジして一般の家庭で幸せになることを選択した犬、というわけ。犬からしたら、たぶんどうでもいいことだと思います。愛してくれる飼い主さえいれば。ただ、そうやってきちんと説明しないと『落ちこぼれ犬』みたいな勘違いする人間が多いのかも、と思います。大きく三章に分かれ、一章はいとのパピーホームを引き受けていた人の話。介助犬は、繁殖ボランティアの下、選ばれた繁殖犬から生まれます。生後2ヶ月で繁殖ボランティアから、パピーホーム宅へ移ります。パピーホームは、介助犬候補の子犬を預かって1歳になるまでを育てるボランティアの一般家庭。1歳になると訓練所に戻り、半年~1年の訓練を受け、介助犬になるか、あるいはキャリアチェンジして一般家庭犬になります。いとはやや神経質で怖がりなところがあったため、介助犬には向かないと判断されます。パピーホームを引き受けていた人は、いとが将来年老いて介助犬ができなくなったらもう一度いとを引き取って一緒に暮らそうと思っていたため、もう二度といとと一緒に暮らせないとひどくショックを受けます。キャリアチェンジして一般の犬として暮らすなら、パピーホーム宅へ戻っちゃダメなの?と思うのですが、パピーホーム宅ではそうやって再度引き取ることはできないらしい。パピーホーム宅では、いとは介助犬になれなかったのではない、ならなかったのだという考え方に納得し、いとが家に来たおかげで家族同士の絆が深まったことに感謝してその現実を受け入れる、という話し。二章は介助犬グミとその飼い主の話。事故で体が不自由になった飼い主は、人目を気にするようになり外出もできずに家に籠もるような生活に。妻は、もしも留守の時に夫の車椅子が転倒したらと考えてしまい、一人で外出できない。ひんな内向きの閉塞した暮らしが、グミがやってくることで一変。明るく積極的になったご夫婦の話。三章は一般犬となったいとを引き取ったご家庭の話。どの話も、犬の素直さ可愛さがよく出ているいい話です。実際の写真も豊富。ちょっとボリュームが軽すぎて物足りないですが、介助犬がどういうものかをわかりやすく紹介している本です。【楽天ブックスならいつでも送料無料】いと [ 原田マハ ]価格:1,285円(税込、送料込)