口入屋用心棒「待伏せの渓」 鈴木 英治
2008年08月 双葉文庫より老中首座・堀田備中守の魔の手が故郷沼里に伸びたことを知った湯瀬直之進は、一路駿河を目指していた。箱根の関所を前にして悲鳴を聞きつけた直之進は、旅の女に襲いかかる雲助の群れに飛び込んでいく・・・・。一方、一足遅れで江戸を発った佐之助は、小田原宿で堀田備中守の息のかかった捕り手らによって宿を包囲され・・・・。好評書き下ろし長編時代小説、シリーズ第12弾。(裏表紙 紹介文より)待伏せの渓 [ 鈴木英治 ]価格:689円(税込、送料無料) (2017/4/3時点)以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。老中の堀田が狙っている沼里。又太郎を亡き者にするなら、直之進がいない方がいいと思うのに、何で直之進に又太郎派の家老の首を見せて、沼里へおびき寄せようとしたのか疑問でしたが、判明。直之進が江戸にいて、腐り米について調査をするのが邪魔だから。そして、江戸から離れて1人になったところを殺してしまおうと考えたから。駿河に向かう直之進に次々と罠が仕掛けられる。藤沢宿では隣の部屋の旅人が急死、小田原宿では火事騒ぎ。火事のせいで睡眠不足の状態で、険しい箱根越えをしていると、女の悲鳴が。駆け付けると雲助に襲われている商売女がいて、助けに入る直之進。でもそれは罠で、狙っていた火縄銃により左肩を撃たれてしまい、川に飛び込んで逃げるも、川の流れが速くて流されてしまう。主人公だから死にはしないけど、これから戦わなくちゃいけないのに怪我は困るなあ。佐之助は町人の姿で沼里に向かう。小田原宿で、堀田の手配による宿あらためがあり、宿から逃走。でも全然危なげない感じで、余裕で逃げていくのでこちらは全然心配なし。結局、直之進より早く沼里に到着。直之進の家を訪ね、留守を守っている下男に本名を名乗っていく。また、千勢の家を訪ね、千勢から預かった手紙を母親に渡す。その後、沼里藩の元家老・宮田の孫・房興がいる寺へ偵察に行く。宮田は又太郎殺害未遂で処分されましたが、房興は命を許されて出家し、この寺の預りになっている。又太郎を殺し、房興を傀儡として沼里領主に据え、沼里を支配するのが堀田の考え。佐之助は屋根裏から、房興に荷担する沼里の家臣達の名を確認するが、外に出た所で、例の顔の変わる遣い手・滝上弘之助に襲われる。不意を突かれ、道中差しを投げ付けて何とか避けるも、背後を取られ逃げるだけで精一杯。こちらも川に飛び込んで逃げ延びる。滝上弘之助は堀田の部下で、島岡真之丞より上の立場らしい。顔が変わるのはどんなトリックかと思っていたら、たんに怒りにより形相が変わる体質なだけでした。な~んだ。直之進がようやく家にたどり着くと、佐之助が待っている。怪我は軽傷で手当済み、回復に向かっている。状況確認と情報交換をする2人。最後に佐之助が「頼みがある。刀を貸してくれ」と切り出す。直之進は、かつて宮田の汚れ仕事をしていた頃に宮田から渡された刀を返さなくていいと渡す。結構いい刀だったらしい。この2人、どんどん親密度が増していく感じで、読んでいて楽しいです。直之進も千勢のことをようやく吹っ切ったようで、そのことで佐之助にイライラしなくなったし。又太郎は今は城内にいるので安全だが、元藩主・誠興の葬儀の時に菩提寺に行くのでその時が危ないと考えられるが、どうやって襲ってくるかがわからない。当日は、又太郎の駕籠の側に直之進が付き添い、寺に入る。すると佐之助が走ってきて「矢で狙われている。駕籠をどけろ」と叫ぶ。しかし、その時間はなく、直之進は矢を刀で振り払って防ぐ。第2弾の矢は佐之助も一緒に守ってくれて無事。堂内に又太郎を逃がすが、更に銃で狙われているのに気付き直之進が守り無事。房興派の家臣達もつかまり、これで一件落着かと思われるが、何かスッキリしない直之進。又太郎の次の間に控えていて、枕を見て、藤沢宿で死んだ旅人は毒殺されたと不意に気付く。又太郎の寝所に駆け込むと、又太郎はまだ就寝前で、毒針が枕から見つかり、これで全ての罠が解除される。最後は滝上との戦い。直之進が怪我の影響もあり押され気味でいると、佐之助が登場。佐之助が戦い始める。直之進は手伝った方がいいかとも思うが、佐之助がそれを望んでいないと手を出さない。何だか親友同士のツーカーみたい。信頼度も高いし。佐之助は滝上を倒して、立ち去る。そこへ、おきくを伴った平川琢之介がやってくる。おきくは直之進が心配で、琢之介に頼んで沼里まで連れてきてもらった。おきくの笑顔に安らぎを覚える直之進。おれんは他に好きな人ができたようで、千勢を吹っ切った直之進はこれからおきくとの恋に進むのかなあ?安らぎつつも、次こそは堀田を捉えてみせると決意するところで終わります。江戸では富士太郎が、暴力事件の解決に当たっている。飾り職人見習いの豊吉が、3人組のヤクザ者に暴力を振るわれた事件。おれんはたまたま豊吉と知り合って、豊吉に惹かれたらしく看病のために医者へと通うようになる。3人組は婦女暴行の常習犯で、おれんも狙われてしまうが、あわやのところで富士太郎が3人を捕らえて助けられる。直之進を中心とするメインの事件以外に、必ず富士太郎の小事件が描かれるんですよね。これはどういう意味なんだろうと思っていたんですが、メインの事件とは関係なく、登場人物達の日常とか人間模様を描いているだけなのかなと思ってきました。本当に帯でやっている時代劇みたいなライト感覚の時代小説です。