「猫弁と魔女裁判」 大山 淳子
2014年06月 講談社より2015年09月 文庫化事務所に来ない。最愛の婚約者との挙式の相談もすっぽかした。天才弁護士・百瀬太郎は、青い瞳をした女性国際スパイの強制起訴裁判にかかりきりになっていたのだ。それはまさか、幼い百瀬を置き去りにしたあの人?百瀬によって幸せをつかんだみんなが彼の力になろうと立ち上がる。人気シリーズ、涙の完結!(裏表紙 紹介文より)シリーズの完結編です。できすぎと言えばできすぎ、でもハッピーエンドの理想型はこんな形というのを具現化したような、満足感の大きな最終巻になりました。読んですっきり、カタルシス作用の大きな1冊でした。楽しかったです。猫弁と魔女裁判 (講談社文庫) [ 大山淳子 ]価格:723円(税込、送料無料) (2017/8/1時点)以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。町弁であり猫弁である百瀬が、強制起訴裁判の検事役を引き受けた。理由は容疑者が、7歳の百瀬を置いていった母だったから。母はある組織に不本意ながらスパイをやらされていたが、組織から抜けるためにわざと捕まった。しかし外務省から法務省へ圧力がかかり、裁判で無罪とするよう裁判長に命令が来る。無罪で釈放されてしまえば、裏切り者のスパイの命が危うい。百瀬は全力で戦い、不正アクセス禁止法により懲役3年・執行猶予なしを勝ち取る。裁判後、百瀬は被告人に「母親が幼い息子を手放す。理由はどうあれ、その行為は間違っていると思いませんか? あなたは35年間、後悔したことはありませんか?」と問いかける。被告人シュガー・ベネット(偽名)は「わたしは正しかった。息子にとってあれが最良の道だった。 あなたを見て、わたしは今、そう確信しています」と答える。泣き出しそうになる百瀬と、微笑んで見つめる被告人。感動のシーンでした。そして、前作で登場した弟・百瀬次郎と名乗る赤毛の青年はユリ・ボーン。組織に雇われる敏腕弁護士で、シュガー・ベネットの弁護人でした。でも、彼も母の安全のために仕方なく組織に使われている人らしいです。まだ裁判が決着する前に、ユリ・ボーンと百瀬が2人でお茶をするシーンがあって、「君の事も告訴しようか?2年は固いよ?」と問いかける百瀬に、「欲張って失敗したら元も子もない。お互いに守るべきものを守ろう」と答えるユリ・ボーン。その後に、もう7年も会っていない母に会いたいと呟くのです。「楽しかったよ、兄弟ごっこ。またできるかな」「いつかきっと」というやりとりで会話が終わる2人。裁判後のユリ・ボーンの身が案じられます。でも、この世界観の中なのだから、悪い事にはなっていないだろうと思えます。途中で少しだけ読むのがイヤだったのが、テヌーの憂鬱。テヌーは百瀬に飼われているサビ猫ですが、裁判の準備で百瀬が忙しくなり家に帰れなくなったため、野呂によって事務所に引き取られました。テヌーは自分を猫だと思っていなくて、事務所にいる20匹の猫を好きになれず百瀬のニオイだけを頼りに百瀬のデスクに座っています。あまりの寂しさに、百瀬の幻を見るようになり、幻は近付くと消えてしまうので離れた所から見ているだけにしよう、と決心する。猫が寂しいのは可哀想だし、幻を見る的な変な擬人化も好きじゃなかった。猫の知能は三歳児(賢い子なら五歳児)。でも思考は人間とは方向性が違うと思うの。概念とかないだろうし。そこだけ引っかかったけど、あとは楽しく読みました。きれいに完結して良かったです。