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カテゴリ:読んだ本
著:三戸祐子
平成13年2月刊行。平成17年5月加筆・訂正・タイトル変更の上、文庫化。 世界の鉄道と比較すると、日本の鉄道はものすごく時間に正確に走っているそうです。 他国では、10分、15分の遅れなど遅れとみなさないという国や、半日以上も遅れたり、 そもそも国内の政情不安(内乱や戦争など)でまともに走っていないところもあります。 そんな中で、なぜ日本の鉄道は遅れないかが、歴史的・地理的な観点から解説されていきます。 このへん、かなり面白いです。 日本の鉄道ダイヤは過密なので、いったん混乱が生じると、鉄道の機能がマヒしてしまいます。 そのために、正確な運行を攪乱する要因をできる限り取り除こうとします。 それは例えば、気象であったり、乗客の不測の動きであったり、物理的な故障であったり。 その中で、特に心に残ったのは安全措置のために生じる遅れについてでした。 その部分の抜粋です。 安全に対して『ずぼらな鉄道』は、わりに簡単な装置を使い、事故の芽があるのにも気付かずに、 すました顔をして、列車を定時に走らせる。 だが、『用心深い鉄道』は、幾重にも安全装置を設置し、念には念を入れた確認作業を行い、 小さな事故の芽を見つけては、列車を止めて安全を確認するので、なかなか前には進めない。 遅れる機会も多いということだ。 つまり日本の鉄道は、事故の芽を必死になって探し、事故の芽を小さいうちから摘みとることに よって、 世界一といわれるほどの安全水準を獲得してきている。 「本当に危険につながるトラブル」であることが確認できた時だけに列車を止めるのではなく、 「何か問題がありそう」なだけでも積極的に列車を止めている。 安全に関しては、まさに”アラ探しの体制”を敷いているのだ。 ここを読んだ時に、尼崎・福知山線の脱線車事故を思い出してしまいました。 これほど安全に気を配っている鉄道で、どうしてあんな事故が起きたんだろう、と。 後半で、現在(書かれた時点での)の鉄道システムが、鉄道職員の頑張りに負う部分が大きいこと、 いつまでも職員の犠牲の上に成り立つ正確さ・安全性でいいのかが問われています。 そりゃそうだよね、と思います。 私が就職した最初の会社は週休二日ではありませんでした。土曜日も普通に仕事していた。 でも転職した今、土曜日に働くなんて、もう考えられない。 楽な生活に慣れたんです。 でも、それって世間一般の傾向でもある。 じゃあ、鉄道は今後はどうなるのか? 本では、今後の方向性としてゆとりの方向を示しています。 詳しく説明しにくいんですが、情報システムの進化によるゆとり、考え方の変化によるゆとりなど 日本の鉄道は根本から変わるかもしれないのだそうです。 願わくば、ぜひよい方向へ向かっていきますように。 いろいろと考えさせられる、たいへん興味深い一冊でした。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.01.19 16:53:57
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