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カテゴリ:読んだ本
訳:上野 元美
「深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち」というサブタイトルのノンフィクションです。 主役となるのは、チャタトンとコーラーという2人のレックダイバー。 レックダイバーというのは、沈没船内部に潜って中の遺物の引き上げを行うダイバーのことです。 1991年9月、チャタトンと仲間のネイグルは、第二次世界大戦で沈んだドイツ軍の Uボートを発見します。 まだ誰にも確認されていない謎のUボート。 その正体を明かすため、チャタトンとコーラーは膨大な資料を集め、人に会い、 公表された歴史の裏側にある真実を探り続けます。 そして、ようやくそれが「U-869」であるらしいと判明したのが1994年。 しかし、その後もそのUボートが「U-869」であると確信できるだけの遺物は発見されません。 ようやく決定的な証拠、艦名を記したタグを発見されたのは1997年8月のことでした。 今のレック・ダイビング事情はわからないんですが、1991年当時の技術・設備において、 レック・ダイビングは生死にに関わる危険なスポーツでした。 現に、「U-Who」と呼ばれるそのUボートが「U-869」かもしれないと 判明するまでに、3人のダイバーが命を落としています。 その危険に対する見返りは、その深海に潜ったという名誉だけなんですね。 チャタトンとコーラーも最初は、誰も知らないUボートの発見者という名誉が目的で 調査をする。 しかし、Uボート内で発見した多数の人骨を見て、彼等の考え方は変化します。 「この謎のUボートに名前を与え、そこに眠る死者達の墓標とすることが自分たちの使命だ」 と。 調査の途中には、「静かに眠っている戦死者たちの墓を荒らすな」といった非難が 浴びせられたりもします。 しかし、それに負けずに続けられたのは、死者に対する深い敬意と確固たる信念があったから だと思います。 艦名がわかる過程は興味深く、わくわくします。 でも、それ以上にこの本の真骨頂は、単にUボートの解明の過程を記録したのではなく、 そこに眠る人々、解明に関わった人達のドラマが感じられるところ。 最後で語られる 「ひとは誰しも氏名不詳のまま海の底に眠っていてはいけない。 家族は、自分の大切な家族が眠る場所を知っておかなければならない」 という言葉。 Uボート乗組員の遺族がコーラーに言った 「気にかけてくれてありがとう」 の言葉。 感動の1冊です。超オススメ。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.07.05 13:44:56
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