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カテゴリ:読んだ本
訳:松井みどり
平成10年1月 新潮社より アメリカ災害救助犬チームの一人であるキャロライン・ヒーバードと、そのパートナー犬達との 活躍を描いたノンフィクションです。 被災地に赴き、その鋭い嗅覚で行方不明者の居場所を発見し、パートナーである飼い主(ハンドラー)に知らせる、それが救助犬の役割です。 キャロラインが最初のジャーマン・シェパードを飼ったのは1968年。 最初は警察グループでの犬の訓練に参加していましたが、1972年に<アメリカ救助犬協会(ARDA)>が行う『サーチ・アンド・レスキュー』という犬を使った新しい活動に加わります。 <アメリカ救助犬協会>は1971年に発足。 創設者はビル・サイロタックとジーン・サイロタックの夫婦で、無報酬・無収益のボランティア団体です。 キャロラインが参加した頃は、まだ協会の人数も少なく、国内外での認知度も低い。 キャロラインは実際の救助活動と平行して、救助犬の育成と災害救助活動の発展のために 尽力した人です。 災害救助犬の活動はけっこう広いです。 地震などの災害現場での捜索の他、山中での行方不明者、水害で水に沈んだ遺体の捜索などもできます。 ニオイによる捜索というと、地面に残ったニオイを追って、というイメージしかなかったんですが、 すごいのは空中に残ったニオイや、水中から浮かび上がってくるニオイもキャッチできること。 また、遭難者のニオイ、つまり元になるニオイがなくても、捜索者達のニオイを覚えさせ、 「それ以外のニオイを探せ」という指示であってもOKなんです。 恐るべし、犬の能力! キャロラインは国内の災害はもとより、1985年メキシコ地震、1986年エルサルバドル地震、 1988年アルメニア地震、そして1955年の阪神大震災でも救助活動に参加しています。 「政府からお金をもらっていないから、政治的思惑には左右されない。その意味では まぎれもなくボランティアだけど、他のあらゆる面で私はプロよ」 と、これはキャロラインの言葉。 彼女の活動に対する自信と誇りを示すとともに、国際的な救助活動の難しさをも 示していると思います。 国同士の対立により救助活動が遅れたり、内戦中であるため救助チームを受け入れた 国の政府により禁じられて反政府勢力地域には立ち入れなかったり。 救助犬チームを派遣する国の思惑もあります。 それによって外交上なにがも得られるか、とかね。 1990年フィリピン大地震以降、アメリカ政府はUS災害対策チーム・救助犬部門の 海外派遣をやめてしまったそうです。 もちろん、神戸にも派遣されてない。 キャロラインは純粋なボランティアとして個人の立場で来日したのです。 キャロラインの人命救助活動に対する情熱と、愛情と信頼に支えられた犬との絆は素晴らしく、 読んでいて感動します。 避けることのできない、老いた犬との死別には思わず涙。 とても興味深い1冊でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.07.01 14:16:46
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