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2014.11.07
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カテゴリ:読んだ本
2005年10月 新潮社より
2008年07月 文庫化

わたしは「みんな」を信じない。だからあんたと一緒にいる。
足の不自由な恵美ちゃんと病気がちな由香ちゃんは、ある事件がきっかけで
クラスのだれとも付き合わなくなった。
学校の人気者、ブンちゃんは、デキる転校生、モトくんのことが何となく面白くない。
優等生にひねた奴。弱虫に八方美人。
それぞれの物語がちりばめられた、「友だち」のほんとうの意味を探す連作長編。

(裏表紙紹介文より)


短編が10話ですが、全ての話が同じ設定内の共通の登場人物で、
主役だけが変わって語られていく構成です。
こういうの、連作長編っていうのか。

話の中心にいるのは恵美ちゃん。
恵美ちゃんの知人である第三者視点の語り手「僕」がいて、
恵美ちゃんと恵美ちゃんに関わりのある子供達(恵美ちゃんの友達、恵美ちゃんの弟、
弟の友達など)について語っていきます。
子供の年齢は小学生~高校生くらい。

子供同士の人間関係や、繊細な心の動きなどを鮮やかに描き出しています。
ああ、うんうん、わかるとか小学生の頃を思い出したりなんかして。

先が気になって早く読んでしまいたくなる、一度読んでもまた読み返したくなる
ような話でした。

ネタバレになりますので、詳細は下に。






























最初の話は恵美ちゃんで始まります。
小学生の恵美ちゃんは、雨の日に傘に入れてと言ってきた子達5人と1つの傘で歩いていて
濡れて嫌な気持ちになったのに出ていってと言えず、一人で歩いていた由香ちゃんを見つけ
「由香ちゃんに入れてもらう」と傘を飛び出したところを交通事故に遭ってしまう。
入院中に見舞いに来た子達を「あんた達のせいよ」と責めたため、退院後にクラスで
仲間はずれにされてしまう。
責めた5人だけでなく、他の子までもが「そういえば恵美ちゃんってわがままだよね。
あたしも思ってた」と「みんな」に迎合した結果のこと。
恵美ちゃんは「みんな」は信じない、と由香ちゃんとだけ友達になることを選び、
周囲に媚びることをやめたクールな子です。

由香ちゃんは生まれつき腎臓が悪く入退院を繰り返しており、友達のいない子。
心の優しい、他人から意地悪をされても気付かない鈍いところがあり、恵美ちゃんは
そこが歯がゆくもあり、いい所だとも思っている。

他の話も、子供同士の能力差の嫉妬だったり、仲間はずれにしたりされたり、
そうされないために一生懸命だったりする話。
そういう話の中に恵美ちゃんはちらっと登場して、オトナな一言を言っています。

10話の中で、けっこう気になって読み返したのが「ふらふら」。
主人公は恵美ちゃんのクラスメイトの堀田ちゃん。

クラスのボス的な存在の子にくっついて、お世辞を言ったり機嫌を取っている子。
クラス内のどのグループにも愛想良く顔を出して、ギャグを連発して笑いを取っては
安心している子。

いるよなあ、こういう子。
というか、今時は大人の社会でも笑いを取ることに一生懸命な人が増えた。
別にウケてなくたって、普通の会話でちゃんとした人間関係が築けるということを
知らないまま育ったんだろうなと思う。

堀田ちゃんは小学校5年生の時に、クラス全体でやる大なわとびが飛べなくて、
女子のボス的存在の万里ちゃんに仲間はずれにされてしまった事があります。
当時のことを中学生の堀田ちゃんは「あのクラスの女子はみんな万里ちゃんの捕虜だった」
と表現しています。

秀逸な表現だな。
小学生の時に、同じようなことがありました。
ボス的な存在の子が一人いて、皆はその言いなり。
その子の気分で、今週はAちゃんが仲間はずれ、今週はBちゃんが仲間はずれと
ターゲットが変化する。
AちゃんとBちゃんとCちゃんはすごく仲良しで、いつも一緒に遊んでいて
「Aちゃんを仲間はずれにしろ」と言われても無視して3人遊んでいればいいのに
3人一緒に仲間はずれだったら、それは仲間はずれとして成立しないのに、
何で言いなりだったのかな、と大人になってから思っていました。
捕虜だったんだ。
だから逆らうことができない。

中学生となった堀田ちゃんは、全ての人に嫌われないように愛想よくして
笑いをとって安心して、でも、そのくだらなさとかも知っている。
そして、人間関係について以下のように思っているのです。

 「平和」の反対語は「戦争」。大げさではない。これは本当に「戦争」なんだ、と思う。
 ほんものの戦争で人が殺されるように、教室の人間家計に疲れたり追い詰められたり
 した子は、ときどき死を選ぶ。捕虜になることでしか生き延びられない子もいるし、
 徴兵制でしかたなく最前線に向かう子だっている。
 きみは、「平和」が好きだ。「戦争」をして勝つことよりも、「平和」なまま、
 なんとなく負けているほうがましだと思う。


こういう人ばかりだと、たぶん世界はもっと平和だろうなあ。

そして、堀田ちゃんは友達2人のケンカがきっかけで、クラスから仲間はずれにされて
しまいます。
2人がケンカをした→1人がグループから抜けた→抜けた子が別のグループに入ったが
話が合わずに退屈そうにしていた→堀田ちゃんは他グループの別の子となら気が合う
んじゃないかとアドバイスをした。
それが気に入らず、2人は連合軍を作って堀田ちゃんを排除しにかかったのです。
その動きはクラス中の女子に広がり、八方美人でウザいと堀田ちゃんは仲間はずれに。

敵の敵は味方。
大人の世界も子供の世界も変わりませんね。

最終的には、元々ケンカしていた2人がまたケンカして、互いに相手を仲間はずれに
しようとあっちこっちと新連合軍を作ろうとしているところで話が終わります。
新連合軍には数が必要なので、堀田ちゃんも仲間に誘われて、仲間はずれは終わる。
でも、仲間はずれにしたことを誰も謝ってくれるわけでもなく、何事もなかったように
以前通り話しかけられるので、堀田ちゃんも以前と変わらない応対をする、という。

怖いねー。大変だね-。
こんなん友達でも何でもないだろうと思いますが、今の子達は皆こんな感じで
人付き合いしているんですかね。
平和な時代に学生生活が終わっていて良かった、としみじみ思います。

そんな話が続く中で、恵美ちゃんと由香ちゃんを中心に、少しずつ本当の人間関係が
作られていく様子が心温まる話として描かれます。

すごく楽しく読めるわけじゃないけど、結構気になってしまう1冊でした。





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Last updated  2014.11.10 13:02:10
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