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2015.12.24
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カテゴリ:読んだ本
2015年11月 小学館より

直木賞受賞作に待望の続編登場!
その部品があるから救われる命がある。

ロケットから人体へ――。佃製作所の新たな挑戦!
ロケットエンジンのバルブシステムの開発により、倒産の危機を切り抜けてから数年――。
大田区の町工場・佃製作所は、またしてもピンチに陥っていた。
量産を約束したはずの取引は試作品段階で打ち切られ、ロケットエンジンの開発では、
NASA出身の社長が率いるライバル企業とのコンペの話が持ち上がる。
そんな時、社長・佃航平の元にかつての部下から、ある医療機器の開発依頼が
持ち込まれた。
「ガウディ」と呼ばれるその医療機器が完成すれば、多くの心臓病患者を救うことが
できるという。
しかし、実用化まで長い時間と多大なコストを要する医療機器の開発は、
中小企業である佃製作所にとってあまりにもリスクが大きい。
苦悩の末に佃が出した決断は・・・・・・。
医療界に蔓延る様々な問題点や、地位や名誉に群がる者たちの妨害が立ち塞がるなか、
佃製作所の新たな挑戦が始まった。

日本中に夢と希望と勇気をもたらし、直木賞も受賞した前作から5年。
遂に待望の続編登場!

(「BOOK」データベースより)


下町ロケットのエンディングで既に、医療分野への進出か?と思わせる伏線は
ありましたが、その方向へ進んだ話です。

人体に使用する医療品は誤作動や不良品が許されず、
そういった何かが起きてしまった場合、訴訟や莫大な補償問題に発展してしまうので
リスクが高い。
それでもその分野に参入する、という覚悟と意味を問う話でもありました。
医療って、お医者さんも含め、日本の医療制度とかいろいろ大変だと思う。

それはともかく。
小説としては読後感がすっきりで面白いです。
わかりやすい悪役(大企業であるとか、権力者であるとか)がいて、
彼等から嫌がらせを受けて佃製作所が苦しい立場に立つが、技術力で逆転する、
という前作と同じ構造です。

早く逆転しろ~とそわそわしながら、楽しく読みました。



以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。























人工心臓を作ろうとしているアジア医科大学・心臓血管外科部長の貴船教授と
日本クラインの久坂と藤堂。
そして日本クラインに部品供給をしたいサヤマ製作所。
彼等が今回の悪役です。(笑)

貴船教授は人工心臓の成功により地位と名誉を手に入れたい。
日本クラインは、人工心臓さえできれば部品を供給する会社などどうでもよくて、
最初、佃製作所に人工心臓のバルブの試作を依頼しますが、将来の大量生産を約束して
おきながら、端からその約束を守る気はない、という大企業の理屈のみで動く会社。
そして、その日本クラインに取り入って、安くバルブを提供したいサヤマ製作所。

サヤマ製作所の社長である椎名はNASA出身のエリート技術者。
なんでも合理的にやるのがモットー。
そのために、佃製作所の技術者でバルブの開発チームにいた中里を、自社に引き抜いて
バルブの開発を進めます。
ところが、このバルブはすごく難しい。
中里は試作品を作るんだけど、試作制作担当者達の細やかな協力が得られず、
成功しないのはおまえのせいだ的な言われ方をされます。
佃製作所を裏切って出て行った人だけど、なんか可哀想で、戻ってくればいいのに
と思いました。

そしてサヤマ製作所は求められたスペック(耐久性)を満たしていない部品を
満たしていると偽って日本クラインに納品します。
知らずに日本クラインは人工心臓を納品。
それを使って臨床試験を行った患者は容体が急変し死亡。
貴船教授は容体が急変したのはたまたまで、担当医師が適切な処置を取らなかったために
死亡したのだと、部下に全ての責任をなすりつけてしまいます。

一方、佃製作所。
北陸医科大学でゴッドハンドと言われる心臓外科医師・一村教授と協力して
心臓手術に使用する人工弁の開発に着手します。
誘ったのは北陸医科大学研究院にいる、元佃製作所社員の真野。
下町ロケット1で会社をやめていった人ですね。

医師も品質も技術的には一流なんだけど、妨害が多くて人工弁の開発は難航。
それと言うのも、一村教授は貴船教授の元弟子で、人工心臓の発案も一村教授だったのに
貴船教授が横取りした過去があります。
今度も、人工弁の開発成功による手柄と経済的利益を奪い取ろうと目論む貴船教授から
共同開発の話を持ちかけられますが、一村教授は断る。
それに腹を立てた貴船教授は、PMDA(独立行政法人・医薬医療機器総合機構)の
審査員である滝川に手を回して、審査で落とすように依頼するのです。

この滝川、ゴッドハンドの一村教授を馬鹿にし、中小企業が集まって開発した医療機器は
何か問題が起きた時に補償ができない、と品質には触れもせず頭から反対の立場を取る
のです。

更に、サヤマ製作所の椎名は、帝国重工に働きかけてロケットのバルブの部品供給を
企みます。
財前の部下で開発担当だった富山と、財前のライバルである石坂。
彼等に取り入り、部品供給が認められれば、もちろん特許は売却するからという条件。
そして燃焼試験の結果、佃もサヤマも成功したため、サヤマ製作所のバルブが採用と
決定されてしまうのです。
佃製作所、ピンチ!

しかし、ここからが大逆転の開始です。

まず人工心臓の件。
咲間倫子というフリージャーナリストが、人工心臓の臨床試験でなくなった人がいるのは
医療ミスではないかと調査し、その結果を発表。
サヤマ製作所が作成した人工心臓のバルブのデータは偽造であったことが明るみに。
椎名は失脚。うふふ。

日本クラインはデータ偽装の件は知らなかったので、佃製作所に部品の納品を依頼。
しかし、大金をかけて試作だけやらされて、実際の製造はサヤマ製作所に依頼した
日本クラインの仕事を、今さら佃製作所が受けるわけがない。
すると日本クラインは他に頼むからいい、と立ち去ろうとしますが、
そこで既に佃製作所が取得した特許を日本クラインが侵害していると告げて、
そのバルブを日本クラインでは扱えなくしてしまいます。
がっくりとする日本クラインの2人。うっふっふー。

帝国重工では、データ偽装を行っていたサヤマ製作所のロケット部品を使うわけには
いかなくなります。
急遽、会議が開かれ、部品供給は元通り佃製作所へ。
そして佃製作所の新製品である異物を取り除くシュレッダーの技術を共同開発するため、
帝国重工がガウディ計画に参加することも決定。
これでPMDAの滝川も文句が言えまい。

そして石坂は、水原本部長からもサヤマ製作所との必要以上のつながりを叱責されて
ギャフンとなるのです。うふふのふー。

財前が医療部門へ相談に行った時がちょっと面白かった。
シュレッダーの共同開発に魅力を感じる財前。
しかし共同開発はガウディ計画への参加とバーター。
ロケットと医療では関連がないと悩む財前に、先輩でもある医療部門の責任者が
ロケットエンジンと心臓弁、畑は違うがどちらも同じ異物除去と、示唆すると
挨拶もそこそこに大喜びで部屋を飛び出して行く、というのが何とも可愛らしい。

今回、心臓弁の開発は立花と加納という2人の若手が担当するのですが、
行き詰まった2人が北陸医科大学へ手術の見学に行くのです。
幼い子供の手術を見て、思わず涙ぐみながら絶対に完成させる、と決意する2人。
思わずもらい泣きでした。

そして、立花がPMDAの審査で「会社の規模ではなく、ものをちゃんと見てください!」と
熱く主張するシーン。
それに心を動かされてきちんと対応してくれる審査員も現れ、ここでもちょっと感動。
滝川が佃製作所のロケット品質を「どうせペンシルロケットでしょ」とバカにするのを
他の人がたしなめるシーンで少し溜飲が下がる思い。

最後に貴船教授が、まるで憑きものが落ちたように、名誉欲とか出世欲から解放されて
「生きているってすばらしい」とか言うシーンがあるのですが、何だかピンと来なかった。
元々は志を持って医療に向かっていた人だったのに、途中から変わってしまった、
それが元に戻った的なことらしいけど、そんなスッキリ都合よく善人になる?
その部分の説明もあまりなかったので、それなら悪役は悪役らしく終わった方が
よかったのにと思いました。





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Last updated  2015.12.24 12:40:55
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