|
カテゴリ:読んだ本
上巻 2012年08月 幻冬舎より
下巻 2013年08月 幻冬舎より 結婚したい、あるいは結婚を意識した複数の男女が、出会いや別れのドラマを繰り広げる 6人の30代男女が中心の物語です。 主人公は、過去に大ヒットした作品を持ち、今もそれなりに実績のある漫画家の覚本。 覚本は、ぶっきらぼうで気が利かない面もありますが、漫画に対して真摯で、 締切もちゃんと守る真面目な人物。 ある日、覚本の学生時代の悪友で、今はフリーでいろいろやっている長谷部が 「合コンをしよう」と誘う。 長谷川は結婚をしたい、なぜなら妻帯者の方がモテるから、浮気を多めに見てくれる 相手を探したい、という不純な動機です。 そこで、覚本の前担当編集者である玉石と、玉石の知り合いで大手広告代理・伝報堂 (電通がモデル?)に勤める漫画家志望の相馬が加わり、4人で合コンやあれやこれやで 出会いを探していく、というのがメインとなって話が進んでいきます。 全体的に軽快なテンポで面白く勢いよく進む話です。 さらりと読めて、楽しめました。
文庫もあります。
以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。 覚本達の合コンの様子がおかしかった。 相馬の知人に紹介してもらって合コンする相手が『丸の内銀河系軍団』の異名を持つ 美女揃い。 いや、いくら美女だってその名前を聞いたら、引くでしょう。 だって『銀河系軍団』って。(^^; しかし、合コン初心者の覚本達はそこはスルー。 前哨戦(というか練習?)として、覚本の現担当編集者である綾子と友人2人に 合コンに付き合ってもらいます。 が、NGな言動連発で呆れられてしまう体たらく。 そして『丸の内銀河系軍団』に挑み、軽々と手玉に取られてしまいました。 まあ、そうだろうとも。 その後も合コン相手を探すんですが、紹介者があまりオススメしない感じで 頭突きが自慢の赤いワンピースの子がいる『恵比寿の赤い悪魔』とか、 一度メルアドを教えたら食らいついて離れない『麻布の不屈のライオン』とか 愉快な相手ばかりを教えてくれるので、3回目の合コンはなかなか成立せず。 登場する女性の1人である奈留美。 結婚相手と出会いたくて、友人の結婚式に5万円かけておめかしして参加するが、 男性とろくに話すこともできずにいる時に、美鈴に声をかけられる。 美鈴に紹介されたヌエという女性の婚活相談のHPを見て、自分も積極的に頑張ろうと 美鈴と共に合コンに励むようになります。 奈留美と相馬は仕事で出会い、相馬から声をかけて合コンをすることに。 覚本と奈留美はいい感じで話ができて、メルアドも交換。 その後に、実は奈留美達のグループこそが『不屈のライオン』であると判明して 男性達が驚愕するのがおかしかったです。 覚本が不器用で漫画の事ばかり考えている人なんだけど、人間的に優しくて 後半になるとカッコいいシーンが出てきて魅力的でした。 相馬が慶応大学を出て、有名な大手広告代理店に勤めているエリートなんですが、 漫画家になりたいと覚本のアシスタントもしながら漫画も描いています。 相馬本人を知っていると面白いが、それだけ読んでも何が何だか?的な話らしい。 それでは無理だと玉石が現実的なアドバイスをしても、根拠のない自信満々で 「彼は僕の才能を妬んでいるから」と聞く耳を持ちません。 覚本に頼んで、他の編集者を紹介してもらうんですが、もう散々な酷評。 はっきり言われた方が本人のため、と覚本も黙って聞いているんですが、 相馬の性格のせいでイラついた編集者が原稿をゴミ箱に捨てた途端、 「何をしてるんだ、拾え!原稿を捨てていいのは本人だけだ!」 と怒鳴る。 すごくカッコよかったです。 覚本のアシスタントが無言でゴミ箱を編集者に押しやったり、その編集者が捨て台詞を 残して去った後に黙って塩をまいたりするのもグッジョブでした。 覚本の現担当編集である綾子は実はヌエ。 奈留美とメールのやりとりの末に、2人でオフ会をすることに。 そこで詳しい話を聞いて、相手が覚本であると悟ったようです。 覚本が別の女の子と食事の約束をしていた日に、それを邪魔するために 「巻頭カラーが地味なスーツの女性の墓参りシーンでは物足りない」とネームに ダメ出しをする。 覚本も何とかならないか考えるんですが、どうにも思いつけず。 「自分だってプライベートを優先させることがある」と、ネームは変更しないと宣言、 しょんぼりする綾子を残して駅へ向かいます。 が、その途中で、不意に素晴らしいアイデアが浮かんで、走って戻ってくる。 興奮状態でネームを切り直すのに夢中、約束は「行けなくなった」とメールして放置。 約束相手の立場だったら勘弁してよという状況でしょうけど、奈留美を応援していたし、 覚本の歓喜が伝わってくる感じで、好きなシーンです。 その後、奈留美とうまくいって、最終的には結婚します。 プロポーズの時に、何もないからと花束の絵を描いて渡すのが素敵でした。 もう1人、登場人物で女性漫画家が出てきます。 国民的人気ギャグマンガ「おちゃのこさいさい」の作者である緑川優。 「おちゃのこ」は「ちびまるこちゃん」的な感じなんかな? デビュー当時から担当編集と10年以上も不倫し続けてきたが、最近別れたばかり。 今は玉石が担当していますが、「最近は人気が落ちてきている。過去の栄光は忘れて もっと読者に受けるような努力をしないと」と無神経な事を言われて泣きながら 飛び出してしまいます。 その後、優へのファンレターの数々を読んで、玉石は「自分が間違っていた」と反省。 電話で覚本に泣きついたため、覚本が優を探して、飲んでいたスナックに来てくれます。 寂しさから覚本を自宅へ誘う優。 覚本が躊躇うと、来てくれないなら以前の不倫相手を呼ぶと言われ、覚本も応じます。 でも、腕を組んで2人で優のマンションへ向かおうとした瞬間、優が新たな展開を 思い付くのです。 「ネーム変えなきゃ」と伝えた優に、覚本は笑いながら 「俺も先週、同じことがあった。漫画の神は時も場所も選ばずに降りてくる」と答える。 ここも好きなシーンです。 この後、玉石は優のファンにも等しい状態になり、最後には結婚にまで至る。 ちょっと出来すぎ感はあるものの、優が幸せならそれでいいやと思えます。 綾子と長谷部もカップル成立。 登場人物がみんなうまく落ち着いて、めでたしで終わります。 テンポよくて、意外な展開やいい話がたくさんあって、楽しい話でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.09.14 12:40:34
コメント(0) | コメントを書く
[読んだ本] カテゴリの最新記事
|